毎年年末になると行われる西本願寺のおすす払いの様子

先日、ご縁をいただき、京都・西本願寺の「おすす払い」に参加してまいりました。
今回はその様子を皆さんにお伝えできればと思います。

ぜひ最後までご覧ください。

西本願寺の「おすす払い」

「おすす払い」は、京都市下京区にある浄土真宗本願寺派の本山「西本願寺」の年末の恒例行事、いわゆる「本堂の大掃除」です。例年12月20日に行われます。

大掃除と言っても、その作法は独特です。
早朝に多くの門徒さんが集い、両手に持った竹の棒でお堂の畳を一斉に叩きます。そして舞い上がったほこりを大きなうちわで仰ぎ出すのです。

いわば本堂の大掃除。京都では、新聞などで「おすす払い」の様子が報じられると「いよいよ年末だな」と実感する人も多いようです。

大掃除はかつて「すす払い」と呼ばれていました

仕事納めの後にやってくる最後のひと仕事、大掃除。これはかつて「すす払い」と呼ばれていました。

今ではすっかり電気やガスに暮らしを支えられていますが、古くは縄文時代より、日本の住まいには「炉(ろ)」と呼ばれる、火を起こす場所が設けられていたと言います。それがやがて形を変え、床を四角く切り出した「囲炉裏(いろり)」となり、家の中で暖を取ったり煮炊きものをしたりする場所として長く日本人に親しまれてきました。

そして、家の中で火を起こすとどうしても天井や梁、壁などに「すす」が溜まります。1年間に溜まったこのすすを払い落し、家の中をきれいにすることを「すす払い」と呼んでいたのです。

すっかり「すす」とは縁遠い暮らしとなってしまいましたが、西本願寺ではこの年末の伝統「おすす払い」を約500年にも渡って続けてきたという訳です。

「おすす払い」で迎える新しい朝

おすす払い 西本願寺 早朝の様子

12月20日朝5時30分、京都・西本願寺の阿弥陀堂にて「おすす払い」の行事は始まりました。

お堂の中に入ると、冬の朝らしい冷えた空気と静寂が身を包みます。糸をピンと張ったような緊張感を感じながら周囲を見渡していると、集まった門徒さんからもどこかそわそわとした雰囲気が伝わってくるような気がしました。

まずは全員でお経を唱え、心を整えます。
まだ日も差さない暗がりの中、厳かに歌うようにお経を読む。私にとっては非日常とも呼べるこの時間が、静かな内省の機会を与えてくれました。1年間色々なことがあったな、と思いを巡らせながら。

おすす払い 西本願寺 儀式

続いて、ご門主様が白い布で覆われた内陣の前へ歩み出て、ゆっくりと竹箒を掲げ左右に振ります。

この邪気を払うような儀式を合図に、前列に並んだ僧侶の皆さんが竹の棒を手に取り、一斉に畳を叩き始めました。バタバタバタと威勢の良い音がお堂の空気を一瞬で変えます。

おすす払い 西本願寺 僧侶の皆さん

それに倣うように、私たちも竹の棒を両手に持ち、お堂の端に並びました。まるでスタートを切ったランナーのように一斉に、そして威勢よく、畳を叩きながら進んでいきます。

背中に大うちわの風を感じながら、無心に「おすす払い」を続けたのでした。

「すす」にも感謝を

ここでとても興味深いのが、西本願寺の「すす払い」は「おすす払い」と呼ばれていることです。

新年を気持ちよく迎えるために払い出す「すす」ですが、西本願寺では「おすす」と、敬意をもって丁寧に表現していることが分かります。

新年を、新しいスタートと捉える人も多いでしょう。決意新たにスタートを切るにあたって、本来拭い去りたいと感じる過去の失敗や後悔も、そのおかげで今があると感じられたとき、感謝の気持ちが湧いてくるものです。

そんな経験を「すす」にたとえるならば、「おすす」という言葉は、どんな過去の経験にも価値があり、敬意を払うべきだと教えてくれているような気がします。

そんな「おかげ様」の精神を感じながら、なんとも朗らかな気持ちで掃除を続けました。

おすす払い 西本願寺 掃除の様子

気が付くと朝7時。
徐々に明るくなり始めた東の山際から、燦々と朝日が差し込んできます。

本来なら煙たがってしまうような大掃除の光景も、この日ばかりは美しく見えたものです。

よかったことも、そうでないことも、きっと何かの意味があるはず。
目の前のものごとをありのままに、ありがたく受け取って、新しい1年を過ごそうと思います。

本年もどうぞ、茶堂をよろしくお願いいたします。

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ライター:
間宮まさかず

京都市在住。妻、7歳の娘、4歳の息子と暮らしています。
子育てにまつわるエピソードや、京都の町の魅力などを綴っていきたいと思っています。