京都にある西本願寺の外観

今回は、京都にある「西本願寺」について、お話してみたいなと思います。

「西本願寺」と聞いて、どんな外観で、どんな歴史のあるお寺か、イメージできる方はそう多くないかもしれません。京都に住んで15年以上経つ私自身も、実はそうでした。

しかし、先日久しぶりにふらっと散歩をしてみると、私が見落としていただけで実は非常に見どころの多い魅力的なスポットであることを再発見する事ができました。

宗教の観点で見ると、西本願寺は、親鸞で有名な浄土真宗のお寺。その中でも本願寺派の本山という位置づけに当たりますが、今回は特に宗教や歴史の知識が無くても楽しめるような、西本願寺の魅力をお伝えしてみたいなと思っています。

■西本願寺とは

京都駅から歩いて15分ほど、梅小路京都西駅からは徒歩10分と非常にアクセスが良く、近くには「京都タワー」や「京都水族館」、「梅小路公園」など気軽に立ち寄れるスポットも多くあります。京都の中でも、人の集まる人気エリアの一つです。

このような京都の町の玄関口に位置し、にぎわいの中心にありながらも様々な時代の歴史が交わる名観光スポットのひとつ、それが西本願寺です。

それでは行ってみましょう!

■見どころ①「御影堂(ごえいどう)」

京都の交通の大動脈、堀川通から一歩その敷地の中へ足を踏み入れると、威風堂々とした佇まいのお堂がまず目に入ります。

思ったより大きいんだな、と何とも取るに足らない感想をつぶやきながら、せっかくお堂の目の前まで来たのにそのまま後ずさり。その全景をカメラに収めるには、相当離れた所から撮影しないといけない事に気付きます。

この御影堂は今から約400年前、江戸時代に建てられ、その時代から現存する木造建築物の中では最大級の大きさを誇るそうです。441畳もある大広間ではなんと1200名以上が一度に参拝出来るという事なので、さすが日本仏教を代表する本山はスケールが違うなぁ、とただただ圧倒されるばかり。

さて、履き物を脱ぎ、中へ入ってきます。

しんと冷えたお堂。

外から眺めているとただスケールの大きさに圧倒されますが、中に入ると、なんだかますます自分自身の小ささを感じさせられるようでした。

先程まで観光客や車の往来で賑わっていた大通りにいたこともひと時に忘れてしまうような、何か特別な空気が漂っているような気がしました。

私は時折、宗教や文化の違いを原因とした紛争のニュースを目にした時など、なぜか自分自身は宗教というものと縁遠い世界観で暮らしていると感じてしまいます。

ただこの場所に身を置くと、堂内の静けさと、ぴんと張り詰めた空気が、頭に浮かぶ思考回路を自分自身に大きく聞こえさせているような気がして、自然とその場に座り込んで、そのまましばらくその声を聞いていたくなりました。

こうした内省の時間と人間の宗教観というものはどこか繋がっていて、誰にでも必要な静かな哲学の時間、それも宗教と呼べるのだろうか、などといつになく真面目に考えたのでした。

■見どころ②「阿弥陀堂」

御影堂を出てそのまま渡り廊下を歩き、隣り合うもう1つのお堂へ向かいます。修復工事が終わり、4年8ヶ月振りに参拝出来るようになった「阿弥陀堂」です。

お堂の中心部で輝きを放っているのは、阿弥陀如来像が安置される「宮殿(くうでん)」という煌びやかな仏殿。息を呑む美しさとはまさにこの事で、その金箔の輝きと荘厳で精細な造りに、思わずじっくりと見入ってしまいます。静まり返ったお堂の中、気付くと私一人が眩しく光る宮殿の前に佇んでいました。

阿弥陀堂は、先ほどの御影堂と比べると2/3ほどの広さですが、それでも800人が一度に参拝出来るという事ですから、西本願寺の本山としての力の大きさがうかがい知れます。

この広いお堂にも、御影堂と同じように、その場に訪れた人を呑み込むような大きな、しかし糸を張ったような緊張感漂う空気を感じました。そして中央には、緻密な装飾で惜しみなく飾られた金色の楼閣。

何とも見ごたえのあるお堂でした。

■見どころ③「唐門(からもん)」

御影堂を出て、少し敷地の奥の方へ足を運んでみる事にしました。

やがて見えてくるあまりにも色鮮やかなこの門。

2021年秋に修復工事が終わったばかりという事で、華やかさが一層際立っています。

先程の静かな心持ちから一変、桃山時代を象徴するこの豪華な装飾に目が覚める思いでした。極彩色とはまさにこういう色使いの事を言うのかもしれません。

よく見ると、麒麟や獅子、孔雀や鶴などが生き生きと彫刻されていることに気付きます。不思議と胸の内側から何かが鼓舞されるような、生命力とエネルギーを放つ動物たち。

一体誰が、どんな気持ちでこの彫刻を掘り、これほど鮮やかな色彩で飾ったのだろう。もはや「門」と呼ぶにはもったいないほどに見事な作品で、決して隅に置けない存在感を放っています。久しぶりに美術館鑑賞に来たような、目も心も奪われる時間でした。

■見どころ④阿弥陀堂門

そう言えば、最初にくぐった門はどんなだっただろう。

ふと頭によぎった疑問を解消したくなり、再び入口へ戻ってみる事にしました。

すると、こちらはこちらで何とも迫力のある佇まい。

比較するものでもないとは思いますが、神社の鳥居のシンプルさと比べてみるならどうでしょう。この迫力、いかがでしょうか。

建築当時のこのお寺が人々にとってどんな存在だったのか私は知りませんが、とてつもなく大きな力を感じるこの出で立ち。敷地もお堂も、他を圧倒するような大きさを誇る西本願寺ですが、この阿弥陀堂門も例外ではなかったようです。

本山という格式を名乗るにふさわしい立派な建築が、京都の玄関口の景観に華を添えていました。

■見どころ~番外編~「本願寺伝道院」

そのまま門を出て、少し周辺を散策してみることにしました。

目の前の細い路地を入って行くと、先程までとは打って変わって、赤レンガに身を包んだオリエンタルな建築に出会います。

この建物は元々、明治時代に設立された生命保険会社の社屋だったそうで、現在は西本願寺の僧侶の方が研修などで使う施設のようでした。

どうやらこの建物、築地本願寺や東京大学の正門、あるいは平安神宮や明治神宮の設計にも携わった伊藤忠太という建築家の作品であるとのこと。

私は決して建築に詳しい人間ではありませんが、今も残る日本の重要な建造物を設計した人物の作品とこんな所で出会えるとは、となぜか嬉しくなり、「まだまだこの町は散策のしがいがあるなぁ」なんて妙にワクワクしながらそのレトロな建築を眺めていました。

さらに、建物をぐるりと取り囲む石造も目を引く造形をしています。

ゾウや鳥、龍や獅子などをモチーフにしているものと思われますが、その姿かたちも表情もどこかファンタジーが漂っていて、建築家の遊び心が溢れているように感じました。

ほんの少し前まで、桃山や江戸の重厚で華やかな建築に息を呑んでいたかと思うと、今度は西洋・東洋の趣が入り混じったレトロな空間へ迷い込んだような、なんとも不思議な小旅行気分。

京都の玄関口にありながら、私にとってこれまであまり馴染みのなかった西本願寺とその周辺エリアでしたが、ご覧頂いたように想像以上の多彩な魅力に溢れていました。

こうして一人でゆっくり散策をしながら、歴史や文化、その芸術性と対峙する時間を意識的に作ってみるのも大切かもしれないな。そんな事を感じながら、帰路に着いたのでした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

■西本願寺・基本情報

【所在地】
〒600-8501京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町

【お問い合わせ】
075-371-5181

【アクセス】
西本願寺へのアクセス情報はこちら[公式サイト/アクセス|お西さん(西本願寺)]

【参拝可能時間】
5:30~17:00

【参拝料】
無料

【所要時間の目安】
30分

【公式サイト】
お西さん(西本願寺)-本願寺への参拝(参る・知る・観る)

 

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ライター:
間宮まさかず

京都市在住。妻、6歳の娘、3歳の息子と暮らしています。
子育てにまつわるエピソードや、京都の町の魅力などを綴っていきたいと思っています。