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- 2023年2月6日
【築地本願寺】カフェやパイプオルガンコンサートも楽しめるオープンなお寺のルーツとは?
インドや東南アジアの寺院にやってきたのでしょうか?
東京メトロ・築地駅から地上に上がるとすぐ目の前に現れた異国情緒漂う建造物。
ここは東京都中央区にある築地本願寺です。
今回は築地本願寺の本堂の建築と、その背景にあるドラマや思いについてご紹介したいと思います。
カフェやコンサートも|開かれたお寺・築地本願寺
築地本願寺は、浄土真宗本願寺派の直轄寺院です。その大きさは関東最大を誇ります。
発祥は江戸時代、1617年に京都・西本願寺の別院として建立されました。
築地本願寺の大きな特徴はそのコンセプトにあります。
「開かれたお寺」
これは、門信徒だけでなく、より多くの方に親しまれ、安らぎの時間を過ごしてもらいたいという思いによるものだそうです。
この思いを体現するように、敷地内にはカジュアルなブックカフェ「Tsumugi」が併設され、女性客を中心に連日多くの方が足を運んでいます。また、本堂では月に1度パイプオルガンコンサートを開催。さらに生涯学習のためのサロン「GINZA SALON」の運営、そしてYouTubeやInstagram、twitterといったSNSでの発信など、敷地外においてもオープンな活動をするお寺です。
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数ある日本のお寺の中でも、ある意味先駆的な活動を行う築地本願寺。そのルーツは、今回ご紹介する本堂建立の歴史を紐解いていくことで、少し垣間見えてきます。
オリエンタルな建築|築地本願寺の本堂
築地本願寺の本堂は、これまでに2度火災の被害を受け焼失していますが、1934年に再建され、現在の姿となりました。
一般的な日本のお寺のイメージとは大きく異なるオリエンタルな佇まい。
インド風の重厚な建築様式に思わず息を呑んでしまいます。
なぜこのような建築様式が採用されたのでしょうか?
そこには二人の人物の思いが大きく影響していました。
その人物の名は、大谷光瑞、そして伊東忠太です。
源流を求めて世界へ|門主と建築家の思い
大谷光瑞は、当時の浄土真宗本願寺派の門主です。
彼は仏教伝来のルーツを研究するために、25歳のときに「大谷探検隊」を組織し、シルクロードへの派遣を3度行います。そして発掘調査の結果、重要な史跡や文書を数多く発見しました。このエピソードだけでも相当な行動力と情熱を兼ね備えた人物だと伺えますね。
一方、伊東忠太は近代日本を代表する建築家です。彼が設計した著名な建造物には、京都の平安神宮や本願寺伝道院、東京の明治神宮や東京都慰霊堂などがあります。若い頃に法隆寺の建築に魅せられた伊東忠太は、日本建築のルーツを調べるため、3年3ヶ月をかけて中国・インド・トルコ、そして欧米への留学を行いました。30代半ばのことでした。
伊東忠太はこの留学中に、中国の奥地で大谷探検隊の一員と偶然出会います。この不思議な縁がきっかけとなり、帰国後、大谷と伊藤は交流を深めることになりました。
門主と建築家。一見、世界線が交わることのなさそうな二人ですが、文化の源流を求めて日本を飛び出すスケールの大きさは共通するところがありますよね。2人は意気投合し、のちに大谷が伊東に築地本願寺の設計を依頼することとなりました。
当時、大谷は伊東にこのように語っていたそうです。
旧来の日本式仏寺建築というものは、その構えが大げさなわりに実際に使っていると不便極まりない。
仏寺だからといって旧来の仏寺建築に固執する必要もない。
機会があったらインド式の寺を造って、在来の仏寺建築にみられたいろいろな欠点をなくしたいものだ。
仏教建築の在り方と真剣に向き合っていた大谷光瑞。
日本建築の源流を東洋に求めていた伊東忠太。
2人の思いが実を結び生まれた築地本願寺の姿に、先駆的なお寺のルーツが強く感じられるような気がします。
伝統の中にある本質を
もちろん、伝統が守られてきたからこそ今の暮らしや文化が成り立っているのは事実です。伝統には敬意を払うべきだと思います。
しかし一方で、伝統に固執するでも、闇雲に否定するでもなく、価値を置くべき本質がどこにあるのか考えることもまた、とても大切なことだと言えるでしょう。
「開かれたお寺」というコンセプトを掲げ、コミュニティの中心であろうとする築地本願寺。
その本堂は、伝統に縛られず本質を見極めることの大切さを私たちに語っているのかもしれません。
東京に足を運んだ際にはぜひ一度お立ち寄りください。
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ライター:間宮まさかず
京都市在住。
子育てにまつわるエピソードや、京都の町の魅力などを綴っていきたいと思っています。