2021年11月、夕方になると西寄りの空に宵の明星、金星が輝いています。
つい先日は、三日月と金星が南西の空で重なり、黄昏時に月と金星の幻想的なコラボレーションができていました。

さて、お月様には月齢によって様々な名前がついているのはご存じでしょう。例えば、「三日月」は「新月から三日目の月」という意味ですね。月の形や出てくる時間にちなんだ名前を見てみましょう。

 

【新月(シンゲツ)/朔(サク)】旧暦の一日。太陽・月・地球が一直線になるため月は見えない。
【二日月/既朔(キサク)】
【三日月/眉月(マユツキ)/若月(ワカツキ)】
【七日月/上弦(ジョウゲン)/弓張り月(ユミハリツキ)】新月と満月の中間。北半球では右半分が見えている。
【十三日月/十三夜月(ジュウサンヤヅキ)】
【十四日月/小望月(コモチツキ)】

今のような暦や時計が流通していなかった時代。時刻は太陽を見て、月日の流れは月を見て、おおらかに感じていたに違いありません。月の満ち欠けを三日月、七日月、十三夜月、もうすぐ満月、と思い浮かべるだけでゆるやかな時を感じます。

 

【 満月/十五夜(ジュウゴヤ)/望(ボウ)】日没とほぼ同時に東の空から昇ってくる。
【十六日月/十六夜(イザヨイ)】
【十七日月/立待月(タチマチヅキ)】日暮れから立って待っていられる間に出てくる月。
【十八日月/居待月(イマチヅキ)】座ってゆっくり待っていると出てくる月。
【十九日月/寝待月(ネマチヅキ)/臥待月(フシマチヅキ)】起きて待っていられないほど遅く出てくる月。
【二十日月/更待月(フケマチヅキ)】夜更けにようやく出てくる月。

花鳥風月を愛でていた日本人。今よりも夜の灯りが各段に少なかった時代には、月が昇るのを心待ちにしていたのでしょう。そんな様子が「立待月、居待月、寝待月、更待月」等という言葉からは感じられます。

 

【二十三日月/下弦(カゲン)】満月と新月の中間。真夜中0時頃に出て翌日昼頃まで見えている。
【二十六夜月(ニジュウロクヤヅキ)】三日月と反対向きの月。深夜3時頃に出てくる。
【明けの三日月】新月から28日目、29日目頃の明け方、東の空に見える細い月。
【三十日月(ミソカヅキ)/晦(ツゴモリ)】晦日(ミソカ)は毎月の最終日。大晦日は一年の最後の日のこと。

伝統的な林業では新月伐採という手法をとります。満月から欠けていく月の期間に木を伐ると水分が抜けやすい(腐りにくい)と言われています。海の干潮・満潮や、女性の生理周期にも関わる等、月は地球上すべての生命のバイオリズムに影響を与えています。月の満ち欠けと自分自身を観察してみると、いつも使っている暦では見つけられなかった周期がそこにはあるかもしれません。

 

これから冬にかけて空が澄んでいるので、夜空を見上げるのにはちょうどよい季節。まずは今日の月がどんな形をしているのか、ぜひ見てみてください。

今は金星のほか、木星、土星といった太陽系の惑星も夕方から夜空に輝いています。目まぐるしい一日の終わりに、ふっと空を見上げてみてはどうでしょうか。

 

「にっぽんの歳時記ずかん」平野恵理子 幻冬舎 2012