アジサイの季節ですね。今年も境内のアジサイが色とりどりに咲き揃いました。

善了寺のデイサービス「還る家ともに」でも、境内のアジサイを摘んでブーケにしたり生けたり、押し花にして楽しませていただいています。「いただいています」と言うのは、お寺のアジサイは野生で、どんどん増殖したのではないからです。

 

30年くらい前から何年もかけて、中川さんとおっしゃるご門徒さんが、挿し木してくれたものなのです。当時70才は越えていたかと思われますが、色んな種類のアジサイがあった方が良いでしょうと、境内の方々に挿し木してくださいました。ある時は、「珍しい種類のアジサイを知り合いの方から分けてもらったのよ」と言われて、嬉しそう見せてくれました。

 

そして「来年、咲かせるためには、7月中に今年の花は全部切らないといけないのよ」と、言われて、小さい中川さんが隠れてしまいそうな崖の中まで入りこんでいって、暑い太陽が照りつけるなか、汗だくになって、でも、楽しげに花を落としてくれていたことも思い出します。

 

アジサイの話をされる時、生き生きとニコニコと微笑んでおられました。まるで『善了寺のアジサイ博士』のようでした。ご往生されて15年たちますが、今年も境内で色とりどりに咲いて、多くの人を喜ばせてくれるアジサイは中川さんからの年月を越えたお布施です。

 

お寺は、こうして、おかげさまの心の灯によって次の世代に伝え伝えられてゆくのだなと、中川さんを知らない方たちがアジサイを愛でておられるお姿から感じられます。