お寺のデイサービス「還る家ともに」は、開設当初、自宅開放型デイサービスとしてスタートいたしました。住職・坊守・寺族が暮らしている空間を使ったのです。開設当初から、そこには、暮らしがありました。開設から約10年でこの度の建築のご縁を頂きました。その間、たくさんの方々との出遇いと別れを通して、デイサービスとしての暮らしがこの空間を満たしていきました。新しい建築をとおして考えたことは、暮らしを大切にしていくことでした。それは、つながりを豊かにし、関わることを粗末にしない実践でした。

建築中、デイサービスには移転していただきました。移転された皆さんが還ってくるときに懐かしさを感じることができるような安心感のある空間にしいたいと思いました。まず、基本的な部屋の配置はなるべく変えないようにしました。和室の位置やフロアーの位置など、窓から見える風景も大切な要素です。お仏壇の位置は変更になりましたが、お仏壇があることで、やはり、変わることのないよりどころが、部屋の中にできているのだと実感しています。お経を頂く中で、新しいデイサービスの竣工を待つことなく、往生された方々も還ってきてくれているのだと感じています。

つながりの豊かさは、懐かしさを生み、安心につながっているのだと思います。そのうえで、暮らしをつくっていくとき、いのちとのつながりを粗末にしないようにこころがけました。本堂とつながる一つの建築物として、建築に対するコンセプトを大切にしてきました。自然の木々や土が、暮らしとは、太陽が昇り、草原のかなたに沈んでいく、大いなるつながりの中でつくられてきたことを思い起こさせてくれるのだと思います。それは、心と身体に大きな影響を与えていくと思います。建築の中にいきるいのちのとの関わりを粗末にしない願いが、デイサービスの活動を支えていく力になると思っています。

この建築をご縁に、これからも、皆さまと共に、日暮らしをつくっていきたいと思います。

住職 合掌