青空の下で干す子どもの洗濯物

俵万智さんの子育て歌集をご存知でしょうか?
俵万智さんといえば、『サラダ記念日』という短歌で一躍有名になった歌人です。

この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日

[引用:俵万智『サラダ記念日』(河出書房新社)]

いまだに色あせない彼女のこの歌は、SNSが暮らしに浸透するよりもずっと早く、大切な人からのたった1つの「いいね」の価値を描き出しています。

そんな俵万智さんの作品について、長らく私の中では『サラダ記念日』のイメージばかりが強かったのですが、最近になって他の作品にも触れる機会がありました。そして彼女の歌集には子育てをテーマにした素晴らしい歌が数多く収められていることを知ったのです。

今回は俵万智さんの子育て歌集の中から、『未来のサイズ』に掲載されている一首をご紹介したいと思います。

最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく その連続と思う子育て

[引用:俵万智『未来のサイズ』(角川書店)]

子育ては幸せいっぱい?ストレスいっぱい?

公園で泣いている幼い女の子

いきなりこんなことを書くと身も蓋もありませんが、子育ては時に大きなストレスをともないます。できればいつも心穏やかな親でありたいものですが、なかなかそうはいきません。

私も、例えばわが子が公園で遊んでいるのを見守っているとき、ふと、自分の時間が奪われているような感覚を覚えることがあります。仕事も家でしていますから、子どもたちが「ねー!見てー!」と何度も声をかけてくると、早く成長してくれー!と苛立つこともあります。

しかし、そんな中でも子供がどんどん新しいことができるようになっていく様子を目の当たりにすると、それは大きな喜びを感じるもの。

改めて書くと本当にささいなことです。例えば、うがいができるようになった日。お風呂で顔が洗えた日。縄跳びが連続で飛べるようになった日。ひらがなが上手に書けるようになった日。

そんな小さなことでも、それまでできなかったことが初めてできるようになった、あの瞬間の子どもの嬉しそうな表情は紛れもなく記憶の中の宝物です。

それと同じように、子どもと過ごす時間の中には、その時しか見れない瞬間もたくさんあります。まだしゃべりがおぼつかない時期のかわいい言い間違いや、周囲を気にせず思い切り泣いている姿、姉弟が「大好き~!」と抱き合っている様子などは、きっと子どもたちが幼いからこそ見られるワンシーンなんだろうなと思います。そんなときは、もう少しだけこの時間が続いたら、と心のどこかで考えてしまう。親の感情はなんとも身勝手なものです。

最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく その連続と思う子育て

手をつないで二人で歩く子どもたち

子どもの成長過程において、「初めて」のシーンを覚えている人は多いかもしれませんが、「最後」のシーンを覚えている人はそういないのではないでしょうか?

振り返ったときに愛おしさを感じる子どもとの時間。それはもしかすると、もう戻らない時間の中にしか無いものかもしれません。

もちろん、子どもも自分も年を重ねていくからこそ味わえる新たな喜びもあると思います。とはいえ、子どもの成長は、その日その瞬間にしか目に焼きつけることのできない貴重なもの。そう意識することができたなら、今より少し心穏やかに、この時間を味わってやろうじゃないかと思えるような気がします。見て見て攻撃にさらされている時でさえも(笑)

そんな大切な感情や時間の流れを、短い言葉の中にぎゅっと詰め込んだ俵万智さんの歌。ぜひ皆さんにも味わっていただきたいなと思い、ご紹介させていただきました。

最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく。
人生とは、その連続なのかもしれませんね。

▼俵万智『未来のサイズ』(角川書店)▼
https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000086/

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ライター:間宮まさかず

京都市在住。妻、7歳の娘、4歳の息子と暮らしています。
子育てにまつわるエピソードや、日々の暮らしの中で大切にしたい想いなどを綴っていきたいと思っています。

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