
わが家には5歳になったばかりの息子がいます。もうすっかりおしゃべりが上手になってきましたが、それでもまだまだ覚えたての言葉が多く、そのたどたどしいしゃべり口を聞いているとほほえましい気持ちになるものです。
さて、このコラムでは「短歌で綴る子育ての日々」と題して、俵万智さんの短歌を紹介しながら、子育てにまつわるお話を徒然なるままに綴っております。
今回は、こんな歌をご紹介させていただきたいと思います。
「きらい」とか「すきくない」とか「にがて」とか
ピーマンが子の語彙を増やせり
俵万智『オレがマリオ』(文藝春秋)
幼い子どもが日常の中で語彙を獲得していく様子を描いた、ほのぼのとした短歌です。私はこの歌に流れるありふれた日常の空気の中に、子の成長を愛おしむ温かい気持ちがじんわりと感じられて、ぜひ読者の皆さまと共有したくなったのです。
子どもの可愛い言いまちがい
おぎゃーと泣き声を上げることしかできなかった赤ん坊が、徐々に会話ができるようになるまでの成長過程には、愛おしい瞬間がたくさんあります。発達の過程だからこそ不意に発せられる、可愛い言いまちがいもその1つです。
私には、幼い時期の子どもの言い間違いをスマホにメモをしておくという少し変わった習慣があり、子育て中の皆さんにもぜひおすすめしたいなと思っています。きっとそのメモは、子育て中の穏やかな感情を閉じ込めたタイムカプセルにもなるはずです。
突然ですがここでひとつ、わが家の息子が口にした言い間違いをクイズにしてみたいと思います!
皆さんはこれが何の言い間違いか分かりますか?
1.とうろこもし
2.たねめぎ
3.ぴよこ
4.おすしさま
5.さらぱっぷ
それでは正解を発表したいと思います。
1.「とうろこもし」 → 「とうもろこし」
映画「となりのトトロ」でも、妹のメイちゃんが言い間違えていますね。この「とうもろこし」という言葉は子どもにとって避けては通れない登竜門のような存在なのかもしれません(笑)
2.「たねめぎ」 → 「たまねぎ」
本来の名称よりも、逆に言いにくくなっているのではないかと思ってしまうこの言い間違い。「今日な、保育園でたねめぎ食べてな」と関西弁交じりに説明してくれる姿に、微笑まずにはいられませんでした。
3.「ぴよこ」 → 「ひよこ」
これほど可愛らしい言い間違いがあるでしょうか?(笑)この時ばかりは息子の成長を止めてしまいたくなりましたが、スマホのメモと心の中に、そっとこの言葉を閉じ込めたのでした。
4.「おすしさま」 → 「おつきさま」
たまにしか食べられないお寿司に敬意を払う姿勢は、親としてもありがたい限りですが、夜空を見上げながらこの言葉をつぶやいた息子に思わず笑わずにはいられませんでした。
5.「さらぱっぷ」 → 「サランラップ」
もう今日からサランラップの名前は「さらぱっぷ」でいい!と思ってしまうほど、可愛らしさと心地よい語感を持つこの言葉。息子がある日突然「サランラップ」と言えるようになってしまった日の切なさとともに、ご紹介させていただきました。
本人は一生懸命しゃべっているのに、絶妙にいびつで、ぎこちなくて、不完全な言葉たち。だけど子どもたちが成長してしまうと、もはや本人ですら再現できなくなってしまうのですから、私はまるで夢の断片を記録するように、せっせとメモに残しているのです。
見逃したくない瞬間が、子育てにはたくさんある
子どもはあっという間に大きくなります。何をするにも純粋で、何をするにも初々しい時代は一瞬で過ぎていくのでしょう。子の成長を願いながらも、少し切なさも感じる。この感情は、きっと多くの親御さんがご経験されてきたことなのだろうなと想像しています。
最後にそんな気持ちを綴った素敵な一句を。
振り向かぬ子を見送れり
振り向いたときに振る手を用意しながら
俵万智『オレがマリオ』(文藝春秋)
今、私の暮らしの一部となっている子どもとの時間も、過ぎてしまえばあっという間。
だからこそ、今しか味わえないこの瞬間を、じっくり丁寧に味わいながら暮らしていきたいなと思っています。
▼俵万智『オレがマリオ』(文藝春秋)▼
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ライター:間宮まさかず
京都市在住。妻、7歳の娘、5歳の息子と暮らしています。
子育てにまつわるエピソードや、日々の暮らしの中で大切にしたい想いなどを綴っていきたいと思っています。