去る11月29日、善了寺の本堂にて「新しい介護」の著者、三好春樹さんの講演会が行われました。「介護の社会化から社会の介護化へ」というテーマに、約40名のご来場者が耳を傾け、話し合い、理解を深めていかれました。医療、介護分野に携わる方が多く、仕事帰りに立ち寄られた方が大半でしたが、皆さんとても熱心に参加されており、講演の一時間半があっという間に過ぎました。ここでは、当日参加した還る家スタッフの感想を紹介します。

 

講演内容

三好春樹さんの介護論。高校を中退してから仕事を転々としたという成育歴から始まり、介護に出会うまで、出会ってから影響を受けた人たち、そのエピソードと言葉が、漫談を話されているかのように軽快に進められていった。医療と介護について「目的、対象、認知症」という三つの視点で見た時の違いを語っていた。介護は人の人生、暮らしに寄り添い今ここを大切にしている(治ったらやりましょうではない)ことなど。

 

心に残ったこと

・介護の仕事にこそ、自分の個性を活かす術があること。

・三好さんが初めての介護現場で出会ったソーシャルワーカーさんの和田さんは、被爆者であった。生い立ちも苦労されてきた方だったが「病気、挫折、コンプレックス」こそ、人を相手にする介護では役に立つ。人に寄り添う人間味がそこにある。

・白衣ばかりの医療現場より、素人職員のいるグループホームの方が利用者さんは目をキラキラさせる。人は治すためではなく暮らすために生きている。それをサポートするのが介護。(無意識の豊かさ)

・医療は「明日に向かっている。治ったら○○しましょうね。だから早く治しましょうね」(ヒポクラテスは治らない人に関わるなという)。介護は「治るまで待たない。今ここを大切にする」

・認知症を医療では異常とみるが、介護では“異文化”として関わる。(おもしろがることが介護)

 

業務に活かすための具体的取り組み

何年ぶりかで三好さんのお話を聞かせて頂きました。介護の仕事をしてきて良かった、介護に関わってきて良かったと、しみじみ思える機会になりました。

成果主義や競争、スピードを求めがちな今の社会において介護は3Kの仕事と言われています。それを超えるやりがいと面白さ、居心地の良さがこの仕事にはあります。言葉にしづらい、気づきずらい部分をしっかり三好さんの言葉や表現、生き様をかけた経験で気づきを掘り起こしてくださいました。自分を生かす、個性を活かす、病気や挫折、コンプレックスさえも、老いや障害をもつ人の前では、役立つ経験であること。

三好さんの介護を学ぶことで、どこか無理をしていたり、違和感を感じながら関わっていたりすることに対して、人を理解する事、認知症を知ることで、そうかぁ、そう関われば!と、その方も自分もお互い気持ちがすっと楽になるような術を知ることになりました。

今後は三好さんの視点を忘れることなく、意識して現場に立ちたいと思います。貴重な機会をありがとうございました。このような講座を職場の皆で聴けることも大変恵まれていると思います。スタッフ個人の個性も楽しんでいける職場だと思っております。