先日、友達に東畑開人氏の新刊『心はどこへ消えた?』が良いよ~と勧められました。彼女には、以前にも東畑氏の『居るのはつらいよ』医学書院発行 2019年初版も勧めてもらい、とても共感できる本だったので、迷うことなく手にして読ませていただきました。氏は、臨床心理士であり公認心理師。大学の准教授でありながらカウンセリングルームを開設しておられます。『心はどこへ消えた?』も、とても感銘できる本で、読み終えたとき私は付箋をたくさんつけていました。多くの付箋を付けた個所のうちから少し紹介させていただきましょう。

「不安とはふしぎなもので、一人ではもっていられなくても、二人なら持ちこたえられる。1+1が0.5になるのが不安の本質だ。」『心はどこへ消えた?』東畑開人著 文藝春秋発行 2021年初版 40頁

一人で抱えきれないほどの不安につぶされそうなときは「0か-(マイナス)」ですよね。でも、誰か一人一緒にそばにいてくれたら、「1+1=0.5」くらいになるといわれるのです。「1+1=2」になりますと安易に言われないところが実感がこもっているな~と思いました。0.5でもいいじゃないですか。0もー(マイナス)も辛すぎます。でも0.5だと闇の中でも小さな灯りがみえてきそうです。不安で真っ暗闇な時、誰かにそばにいてもらって手を差し伸べてもらえたら幸せです。またあるときは、不安な誰かのそばにいて手を差し伸べられたら幸せです。

『忙しいとき、心は亡くなるのではなく見失われるだけなのだと思う。(中略)冷凍庫の奥で存在を忘れられたドライアイスみたいだ。(中略)だから、必要なのはドライアイスを水にひたすことだ。ときどきでいい。すると、ぷくぷくとちいさなあぶくが立つはずだ。このとき、水が他者で、あぶくが言葉だ。心の中で凝固している言葉は、他者と交わることで初めて、形になる。」同書 127.128頁

これもまた、響きました!忙しくなると、見事に心を失ってしまう見本のような私。そして、後から後悔と反省をするも、覆水盆に返らず。忙しくて心を見失いそうなとき、あえて水につかろう。あぶくがぷくぷくぷくぷく出てきて、心の中の凝り固まった閉ざされた気持ちが「たすけてください」と素直に言えるようになるかもしれない。来週からお彼岸です。今年のお彼岸はにこやかに乗り越えられそう。でもやっぱり、お彼岸終わったら、温泉にゆっくりつかりたい。あー、温泉だとあぶくが一瞬で出て瞬時にドライアイスが溶けてしまうので、やっぱり水の方が効果があるのか、東畑氏に聞いてみたい。

善了寺 坊守