5年前、侘助(わびすけ)の小さな椿の苗木を買ってきて植えました。

しかし、毎年「まだ、咲かな~~い、まだ、咲かな~~い!」と青々した葉っぱばかりを見ていました。

「もう、この苗木は咲かないのかなぁー」と、あきらめかけていました。

ところが今年、ツボミをつけてくれ、初めて花が咲きました。

うれしかった~~

お寺の境内には、沢山の花がありますが、冬になると水仙や梅。春先には、フキノトウが出てもみじに新芽がつき、ももに桜。梅雨ごろからアジサイに藤の花、夏になったら百日紅。秋になったらシュウメイギクや、柿や銀杏が実り、寒くなってきたら、夏ミカンが毎年鈴なりになる。これらの花たちは、毎年毎年、季節が来たら咲いてくれていたから安心していました。土と水と太陽があっても5年咲かなかった侘助。でも、この5年間は侘助にとって、とっても必要な5年間だったのだろうと思います。目には見えない熟成期間のような・・・

「1+1=2じゃないんだよ」という住職の声が響きます。

造花や何年も楽しめるブリザーブドフラワーも美しいですが、5年間かかって、命の力強さと複雑さと尊さを教えてくれた1輪の花がとても愛おしい。

横浜・善了寺

坊守 成田美砂