24時間営業の店舗や飲食店があちこちに点在し、どこかでいつもネオンが光っている現代社会。昼も夜もなく忙しい毎日のなか、少しだけ電気を消してスローな夜を過ごしてみようというイベントが行われました。今回は、素敵な夜の過ごし方のヒントが詰まったイベント「100万人のキャンドルナイト」をご紹介します。

国境を超えて広がる「100万人のキャンドルナイト」

「100万人のキャンドルナイト」は、夏至の日と冬至の日の年二回、みんなで夜8時から10時までの2時間、一斉に電気を消しましょうというイベントです。

どうして夏至と冬至に開催されるの?

夏至の日と冬至の日は、地球のどこにいても必ず共通でやってくる日。夏至の日、北半球では昼の時間が最も長くなり、南半球では夜の時間が最も長くなります。そして、冬至の日には北半球で夜が最も長く、南半球では昼が最も長い日となります。

世界中の人々に同じように訪れる夏至と冬至の日にイベントが開催されるのは、主義や主張、国籍の違いを超えて自由にイベントに参加してもらい、周囲とのつながりや自然とのつながりを感じてほしいという主催者の思いが込められています。

なぜ電気を消してキャンドルを灯すの?

「100万人のキャンドルナイト」は、“何か”に対して反対を声高に叫んだり、主義や主張を訴えたりする運動ではありません。現代社会の豊かさの象徴とも言える電気を消し、キャンドルの明かりで過ごすことで、本当の豊かさについて考えてみようという試みです。

東日本大震災を機に考えた “幸せ”の意味

明治学院大学教授の辻信一氏ら5人が呼びかけ人代表となって、2003年にスタートした「100万人のキャンドルナイト」は、自発性と多様性のムーブメントを大切にしながら、国境を超えて浸透していきました。

自発性と多様性のムーブメントは海外へ

約500万人が参加して全国約2300カ所の施設で消灯した、同年6月22日の初イベントを出発に、環境省と連携しながらイベントは年々拡大。2005年には、東京タワーや大阪城など、なんと全国22716カ所の主要施設が消灯する規模にまでなりました。やがて、そのムーブメントはアメリカやヨーロッパの海外にも広がっていきました。

新たなステージへ向かうキャンドルナイト

イベントがゆるやかに世界へ広がっていく中、2011年3月11日に「東日本大震災」が発生しました。奪われた多くの命、不便な生活を余儀なくされる被災地の人々、そして福島第一原子力発電所の重大な原発事故——。これらを目の当たりにし、イベント関係者だけでなく多くの人が、これまでキャンドルナイトが行ってきた「でんきを消して、スローな夜を。」という行為から考える“本当の豊かさ”について、改めて思いめぐらす機会となりました。

スタートから10年目となる2012年、「手放すことで後は一人ひとりが自由にキャンドルナイトを行い、さらに進化していくのでは」という呼びかけ人代表たちの思いから、イベントは終了。キャンドルナイトは、個々が主人公の新たなステージへと向かって歩み始めました。

電気を消してスローな夜を過ごしてみませんか?

イベント自体は終わってしまいましたが、普段の生活から過剰な電飾をなくして自然の光で過ごすという「100万人のキャンドルナイト」の試みは、個人でも気軽に取り組めます。

何のために電気を消すか、電気を消して何をするかは、すべて自分次第。キャンドルの明かりのもと、家族で語り合ったり、子どもに絵本を読んであげたりすることで、日常生活では見えなかった本当の豊かさが見えてくるかもしれません。また、恋人といつもはできない平和の話をしてみたり、みんなで世界の未来のことを真面目に考えてみたりするものいいでしょう。

みなさんも、たまには少しだけ電気を消して、温かなロウソクの明かりで素敵な夜を過ごしてみませんか? 地球にも、自分にもやさしく、持続可能なスローライフが待っているかもしれません。

参考: