僕は落語が好きなのですが、その理由の一つに「登場人物が生きている者だけではなく、死者もちゃんと登場してくる」というのがあります。

例えば「三年目」という落語の噺があります。

その噺は、

とても仲のよい夫婦がいました。けれども、このお嫁さんが、ちょっとしたかぜをこじらせて大病になってしまいました・・・。

『落語でわかる江戸文化 体験!子ども寄席 2 おばけ噺 しごとの噺』
文 古今亭菊千代 絵 水野ぷりん 偕成社 刊 42頁 ~

このお噺は、お嫁さんが、早く亡くなってしまうのですが、亡くなるときに、ちょっとした約束をします。「亡くなる人と約束をする」というと、ちょっとドキッとしませんか?こういう体験がとっても大事なんだと思います。

生きている私たちの関係性が多様なのに、何故、亡くなった人との関係性だけ、あるパターンに押し込めてしまうのでしょうか?

落語は、笑いの中で、亡くなった人たちの多様性をとっても大事に伝えてくれます。決めつけなくてもいいんじゃない。だけど、最低限大事にすることは大切に伝えてくれる。死者を粗末にしないこと。

私たちは、自由に発想しているようで、時代に選択させられてしまっていることがたくさんあるのかもしれません。ウィズコロナの時期だからこそ、笑いとともに、ゆっくり考えてみたいものです。

あ~はやく、安心して古今亭菊千代師匠の落語を聞きたいです。