世情不安の中、心からお見舞い申し上げます。

この世情の中で、卒業式が中止になっているところが多くあります。恩師の言葉を身にうけて新しい門出を迎えていく大切な式が中止になることは、本当に悲しいことです。だからこそ、今までいただいた言葉を思い出し、大切に聞かせていただきましょう。人生を支える言葉に出会うことは今の苦悩を超えていく力になるのだと思います。

恩師の言葉を大切にした親鸞さま

日々、思いもよらないことが起きてきます。そんな時だからこそ、恩師の言葉を聞かせていただきましょう。謙虚に聞くことのできる言葉、そして、言葉を通してお互いを尊ぶ関わりの大切さを思わずにはおれません。

恩師からいただいたご恩を心から大切にされたのが、親鸞さまでした。特に、人生の大ピンチの時に、お師匠様の言葉を本当に大切にされていました。鎌倉時代、90歳のご生涯を生き抜かれたのが親鸞さまです。その晩年のころ(1256年~1260年 親鸞さま 84才~88才頃)に、京都や鎌倉に、大飢饉と疫病が襲います。(1)  その頃に、親鸞さまは、特にお師匠様の法然さまのお言葉をまとめた『西方指南抄』というお書物を編纂されています。

「古気候研究」という研究分野からわかるのですが、気候変動が激しく、天変地異もおき、そして、疫病がはやる。まさに、今の私たちの不安とつながるのではないでしょうか。そのただ中で、法然さまのお言葉を聞いてゆかれました。また、お師匠様を大切にされた方々の言葉も粗末にされませんでした。そして、その言葉を文献として残してくださいました。

親鸞さまは、法然さまを独り占めにしなかったのです。人生の危機に直面した時に、もう道がないと思ったその時に、「道あり」と示し、そして「その道を歩まれた人あり」と、自分一人で握りこむのではなく、ともに聞き、ともに生きる道を伝えてくださったのです。それはそのまま、法然さまの姿でもありました。

大切な一言をシェアしませんか?

みなさんにも人生を支えてくれた大切な一言があると思います。こんな時だからこそ、みんなでシェアしたいですね。是非、思い出してみてください。私から、私の恩師 浅井成海先生が残してくれた一言をシェアします。

悲しみを知る人は、他の人の悲しみを知る人である。悲しみを知る住職でありたい

厳しい現実と向き合うからこそ、聞かせていただく、いつも心に響く言葉です。

参考文献

(1)『気候で読む日本史』田家康 著 日経ビジネス人文庫刊 145頁~ 参照