虹の色、知識か体験か

空にかかる虹の色は?と聞かれてすぐに答えられるでしょうか。
子どもの頃、虹は七色と教えられたけれど、私にはどうしても七色に見えませんでした。今でも、言われてみれば七色かもしれない、というくらいに感じます。

タイトルの虹の写真を見てください。色の境界はあいまいですね。赤っぽい部分と、青っぽい部分と、その間の色。すべてがグラデーションであるならば、七色よりもっと細かく色を分類することもできます。色の名前をどのくらい知っているでしょうか。

日本では、虹は赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と教えられます。けれども世界では、虹の色は七色ばかりではないのをご存知でしょうか。アメリカでは虹は六色、中国では五色といわれるのが一般的です。インドネシアでは二色といいます。
文化や歴史や異なる背景の中で語り継がれていることがあります。自分の知っていることと違っても、それは間違いではありません。

だから、子どもが虹を決まった七色で描かなくても、それはそれでいいと思うのです。ピンク色を使ったら本当にそのように感じているのかもしれません。知識と実体験で感じることは違うことがありますよね。

うちの子は、スミレの花を見て「青い」と言っていました。私はそれを「紫」と呼ぶけれど。「スミレ色」が的を得ているのかもしれないけれど。視覚を交換することはできないので、彼女が世界をどのようにとらえているのか、想像することしかできません。

 

虹と虫、後になってわかること

小学生の頃、不思議だったことがあります。
虹という漢字を習った時、字の中に「虫」が入っていたからです。虹に虫偏は似合わないと思いました。
大人になって漢字の成り立ちを知りました。虹は天に住む龍で、地上へ水を飲みに来た姿だといわれていたのです。もともと「虫」は生き物全般を表し、特に爬虫類を意味したそうです。龍は爬虫類の神獣だから虫偏。大昔の中国の話です。
その時、理解できなくても、時を経てわかるようになることもあります。以前はよくわからなかったことが、色々な出会いや体験や物の見方を知るようになって、なるほどと納得するのです。だから、答えを急がなくてもいいかなと思うのです。

なんでもインターネットですぐに調べられる時代です。AIが答えてくれる時代です。それでも腑に落ちないこともあります。答えがたったひとつの問いの方が世の中には少ないと思います。

 

余談ですが「風」にも虫が入っていますね。生き物じゃないのに。これも象形文字の時代へ遡ります。風は大きな鳥の神獣、つまり鳳凰が、羽ばたいて起こすものと信じられていました。そのため初期には「鳳」と書かれていました。時代が下って、風を起こすのは龍とされ、鳳の中の「鳥」が「虫」に置き換えられたということだそうですよ。

 

参考文献
「空を、読む」 佐々木まなび 芸術新聞社 2023
「漢字百話〈虫の部〉 虫・むし事典」 鈴木荘夫 大修館書店 1988
「白川静さんに学ぶ これが日本語」 小山鉄郎 論創社 2019

 

寄稿者 ほりえりえこ
湘南在住。小学生の娘と暮らしてます。今を大切に。日々のなぜ、なに、どうしてを大切に。心が動いたこと、子どもに伝えたいことを書いています。