年の瀬も近づいてきました。皆さん、年越しには蕎麦を食べますか?

(クイズ:暖簾の文字は何と書いてあるでしょう。答えは最後に。)

最近、小学生の娘が「冷たいおそばが食べたい!」と言うようになりました。もっと幼い時に好きな麺といえばうどんだったのに、少し大人になったのでしょうか。

さて「冷たいおそば」と言っても、お店によって表現の仕方がいろいろあります。茹でたそばと麺つゆの組み合わせなのに呼び方が違うんです。どうしてでしょう。子どもにきかれて困りました。

皆さんは「冷たいおそば」と聞いてどんな名前が思い浮かびますか。

 

 

◎もりそば、ざるそば、せいろそば

まずは、実はもともと単なる器の違いだった呼び名から。

【もり】器に盛ったそばのこと。
【ざる】ざるに盛ったそばのこと。明治時代、ざるに盛ったもりそばに海苔をかけて食べたことから。
【せいろ】せいろに盛ったそばのこと。蒸しそばの名残り。初期のそばは製粉技術も低くそば粉十割でつくると切れやすかったため、せいろで蒸していた時期があった。

 

◎十割そば、二八そば

小麦粉の分量に拠る名称。そば粉のみで細長い麺にしようとすると扱いが難しい。粘りを補うためつなぎに小麦粉を加えてそばを打ったことから。

【十割そば】そば粉のみ。
【二八そば】小麦粉:そば粉=2:8

 

◎さらしなそば、やぶそば、いなかそば

粉のひき方による分類。

【更科そば】軽くひいて実の中心部だけを取り出した粉で打った白いそば。そばの香りは弱いが喉ごしがよい。御前そばとも呼ばれる。
【藪そば】鬼殻を取った丸抜き(お米でいう玄米の状態)をひいた粉で打ったそば。丸抜きの状態により緑がかった色になる。田舎そばと更科そばの中間の風味。
【田舎そば】鬼殻のついたそばの実をひいた粉で打った黒っぽいそば。そばの香りが強い。

更科、藪と聞いて江戸そばの御三家を思い浮かべた方はそば通ですね。江戸時代中期、更科、藪に砂場を加えた三つがそばの有名店だったそうです。暖簾分けしたお店は東京のみならず全国にあります。

 

◎わんこそば、わりごそば、へぎそば

地域色のあるそばの食べ方。名称。

【椀子(わんこ)そば】岩手県南部地方の名物。客が食べ終わるたびに、給仕係が一口ほどに盛られたそばを椀に入れる食べ方。
【割子(わりご)そば】島根県出雲地方の名物。割子と呼ばれる円形の器に盛り付け直接汁をかけて食べる。黒っぽい田舎そば。
【へぎそば】新潟県魚沼地方の名物。つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使ったそば。へぎと呼ばれる四角い板状の器に一口ずつ並べて盛られる。

 

この他に戸隠そば、会津そば等地名を冠したそばもありますし、年越しそばや引っ越しそばのように生活・行事に関連したそばの名前もあります。日本人の主食なのか?と思うくらい、そばを呼び分けていますね。日本各地のそばに、それぞれ歴史と文化がつまっていて興味深いです。

今度、娘と一緒にそばを食べに行ったら、名前の違いを説明できるかな。

 

*クイズの答え

この暖簾には「生楚者゛(きそば)」と書かれています。
・これは変体仮名という漢字由来の仮名です。江戸時代までは現在の平仮名、片仮名以外にも多様な仮名が教えられていました。
・本来「生そば」はそば粉100パーセントという意味でしたが、次第にそばの代名詞のようになり、現在ではつなぎの入ったものでも「生そば」と称されています。

出典
「蕎麦の旅人―なぜ日本人は「そば」が好きなのか」福原耕 文芸社 2017
「つくってあそぼう そばの絵本」服部隆 農文協 2004
「図説かなの成り立ち事典」盛岡隆 教育出版 2006

寄稿者 ほりえりえこ
湘南在住。小学生の娘と暮らしてます。今を大切に。日々のなぜ、なに、どうしてを大切に。心が動いたこと、子どもに伝えたいことを書いています。