こんにちは。
私は2019年4月から瀬戸内海の離島、小豆島で暮らしています。夫、子ども二人と横浜から移住してきました。ここでは島暮らしの日々をお届けします。
今回は、小豆島で出会ったことばについて。
小豆島は香川県にあります。香川県で昔から話されていることばを讃岐(さぬき)弁といいますが、讃岐弁もざっくり丸亀あたりを境に東讃弁・西讃弁にわかれるそうです。
このうち東讃弁をベースにしたのが小豆島弁ですが、海運上とても便利な立地にあるため、古くから多くの人が行き来した影響により、関西・中国地方の言葉も混じって徐々に独特の「島ことば」が形成されていったようです。
関西・中国・四国出身の方なら、自分の土地のことばと小豆島ならではのことばの違いがより正確にわかると思います。でも東京・横浜から小豆島に移住した私たち家族は、ざっくり西日本に共通のイントネーションやアクセントにも馴染みが薄かったので、島で聞こえてくるおしゃべりのすべてが新鮮に感じました。
移住当初は島の介護施設でフルタイムの仕事に就いていたので、そこで出会った島出身の職員さん、お年寄りのみなさんが話す、こてこての島ことばに毎日囲まれて、それってどういう意味?え?え?と聞き返しながら毎日を過ごして吸収していました。
ここでは、移住当初に出会ったことばを使用頻度の高い順にご紹介します。
一番よく聞くのはこの言葉です。「ごつい」は私は関東では「ごつごつした、頑丈な」という意味でしか使わなかったので、日常会話にほとんど出てきませんでした。こちらでは、良くも悪くも「すごい」という意味で、強調したり感心したりとけっこうカジュアルに使われ、一日に何度も出てきます。私としては「やばい、超~」を使う感覚と同じなのかなーと思ってます。
この言い回しも多いです。「ごっつ」「ごつげに」は濁音のせいか、語感が強く聞こえるので、私には単に「すごく」というよりも「もんのすごく」みたいに力が入ってきこえます。
これは西日本で広く使われているようですが、語尾の印象がやさしくかわいいかんじに聞こえます。「なにしよん」と同じような種類で、「なんができよん」(なにができるの)という言葉もあります。
香川のJAのCMで、すみっこぐらしのキャラクターと野菜が出てきて「なーんがでっきょん、なんがでっきょん、なーんがでっきょんなー♪」と歌うバージョンがあります。子どもたちも好きでよくうたっています。
当時3歳だった娘が保育園でさいしょに覚えてきたことばがこの、「なにしよん」でした。
「全然しない」と言うよりも「なんちゃせんわ」と言うほうがよりマイルドに聞こえます。普段は出てこない「ちゃ」が急に会話のなかに入ってくるのが、うる星やつらのラムちゃんみたいでかわいいなと思ってます。標準語だとカドがたつことでも、方言でくるむと優しく聞こえることが多いので、そこが方言の魅力だなあとちょっとうらやましく思います。こわもてのおじさんが使ってもかわいく聞こえます。
ばっかり、を略して「ばー」と使うのは岡山、広島、高知のことばにもあるそうです。
特に②のほうは「うそばーっ!」で会話が終わるので、急に会話が途切れたように聞こえてしまい「、、っかり!」とついつい足したくなります。
「えらもん」は「おえらいさん」。ドラえもんみたいでこれもかわいいです。
「ころんだ」は「ころいだ」に変化していました。ちなみに介護施設の職員さんが利用者さんのことをたまに「とーちゃん、かーちゃん」と呼んでいて、それもさいしょは新鮮でした。でも島では顔馴染みの関係がたくさんあり、○○さんと呼ぶよりも(誰かの)とーちゃん、(誰かの)かーちゃんと呼ぶほうがしっくりくるし、大事に思っていることも伝わります。親しみをこめたことばが居心地のいい雰囲気を作っていました。
「しのべる」は「片付ける」。
忍ばす、からきているこの言葉は讃岐弁のほか、土佐弁(高知県)、壱岐弁(長崎県)にもあるようです。書類を元に戻しておいてほしいときに使われていました。
このほか、椅子にもたれてほしいときに「すがってー」という言葉も使われていました。
「すがる=もたれる」は島根県、広島県、山口県でも使うようです。私にとって「すがる」は「泣いてすがりつく」というイメージが強く、ほぼ日常では使わない言葉なので最初に聞いたときはびっくりしました。
「しのべる」「すがる」というような表現は、わりと年配の方がよく使っていて、30代以下の人からはあまり聞かれませんでした。メディアの影響なのでしょうが、どの地域でも共通してお年寄りほど濃い方言を使っていて若い人ほど薄くなっていく現象がありますね。20代の職員さんと話しているときにはほとんど違いを感じませんでした。
これはちょっと複雑な言葉でした。「いい?」を「えい?」と聞くのですが、返事はだいたい「えい」か「えいえい」と繰り返して返ってきます。
私は「えい」も「えいえい」もOKだと思っていましたが、同じく「えい」を使う土佐弁の解説によると、「えい」の語尾が上がらなければOKの意味、語尾が上がるとNOの意味、えいえいと繰り返すのもNOの意味…と書いてありました。
そういえば私も「これ要りますか?」と聞いたときに「えい」や「えいえい」と言われて、OKなのかNOなのかわからなくて、何度か出したり引っ込めたりして「え?どっちどっち?」とうろうろしたことがありました。
小豆島弁の「えい」は土佐弁と同じ法則なのか違うのか…。まあ、標準語でも「いいです」「大丈夫です」ということばが時にOKだったりNOだったりするので、方言の曖昧さというよりは日本語の曖昧さの問題で、その場のシチュエーションで意味が決まるものなのかもしれません。
うちの子どもたちは娘が3歳、息子が2歳という言葉を獲得する時期に小豆島にきました。
最初の一年間は保育園で朝から夕方遅くまでたくさんのお友だちや先生方と一緒に過ごしていたので、どんどん島のことばを話すようになっていきました。このままアクセントもイントネーションも完璧にマスターするかと思いきや、新型コロナウイルスの影響でステイホームの時期を挟むようになり、諸事情で2年目からは少人数の幼稚園に転園することになり、以前より島のことばに触れる機会が減ってきました。今は親の話す「~だからさー、それでさー」や「~じゃん」という語尾と、幼稚園で覚えてくる「ほんまに~」「~やでー、~なんでー」ということばが半々くらいでごちゃまぜに話しています。
言葉は生きているなぁと実感しつつ、島で出会ったことばはまだまだあるので、その2に続きます。
参考サイト
小豆島の方言①ー小豆島せとうち感謝館https://kansyakan.com/archives/2005/
讃岐弁wikipediahttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%AE%83%E5%B2%90%E5%BC%81
讃岐方言集http://wwwe.pikara.ne.jp/fukuzaki/hougen.html
高知県民がよく使う土佐弁まとめhttps://jouer-style.jp/4365?p=5
goo辞書 広島の方言https://dictionary.goo.ne.jp/srch/dialect/%E5%BA%83%E5%B3%B6/