こんにちは。長雨が去り暑さも戻ってきましたが、そろそろ夏も終盤ですね。

さて、今回は「古民家暮らし」の実感について書いてみようと思います。

 

いま私たちが借りて住んでいる家は昭和後期に建てられた家で、

「古民家」というほど古い家でもないかもしれませんが、瓦屋根と焼杉の外壁が特徴的な日本家屋です。

焼杉とは、杉の板を黒く焼いたもので、潮風による塩害から家を守る防腐効果や、火事による延焼を防ぐ効果があります。

この焼杉の壁の家は、直島、豊島など、この辺り一帯の島でよくみられます。

私も学生のころ、現代アートを見に訪れた直島でこの焼き杉の家が建ち並ぶ風景を初めて目にしました。

焼いてあるなんて珍しいなぁ、黒い外壁と瓦屋根の組み合わせがなかなかカッコいいなぁ、と思っていました。

私自身は新築で建てられた一軒家で育ち、大学以降は寮のワンルーム、結婚してからも主には2LDKの鉄筋コンクリートでできたアパートに住んでいたので、

畳部屋がメインの瓦屋根の日本家屋に住むのは初めてでとてもワクワクしました。

 

 

古民家暮らしのメリット : 畳の良さと空間の広さ

 

以前の住まいと比べて最大の違いであり最大のいいところは、やっぱり家が広いこと。

一階は十四畳+六畳の空間に風呂・トイレ・ダイニングキッチンがあります。

島のなかには、もっと広い家もたくさんあるのですが、都市部の賃貸物件ではなかなか望めない広さです。

十四畳の空間は、子ども二人がおもちゃをたくさん広げて遊んだり、かくれんぼやかけっこをして走り回っても十分な広さで、

このコロナ禍で家で過ごす時間が大幅に増えてもそれほど閉塞感を感じずにすんでいます。

二階も同じくらいの広さがあり、主に夫の書斎と、夫が始めた中高生対象の学習塾として使っています。あじさいの咲く小さな庭もあります。

ここでの生活で、あらためて畳の空間の良さに気がつきました。

布団を敷けば寝室になり、ちゃぶ台を置けばすぐに食事や書きものをするスペースが作れます。

あるときは客間にもなり、ふすまを取り払って空間をつなげれば大人数にも対応できるなど、汎用性が高いです。

また、ソファーやベッドなどの大型家具が要らないので、模様替えが簡単で引っ越しも楽です。

なにより、畳の上での暮らしは大人も子どももとてもリラックスできます。

維持管理はフローリングより大変な面もありますが、

湿度が高くて土地のせまい日本の住宅事情に最適な素材であることをあらためて実感しています。

 

 

古民家暮らしのデメリット : 虫が出る夏、家の中でも寒い冬

古民家で暮らすデメリットといえば、やっぱり「夏の虫と冬の寒さ」です。

それなりの築年数が経っているため、家の床や壁、畳のへり、網戸などにところどころかすかな隙間が空いていたりするので、完璧に虫の侵入を防ぐことはできません。

手のひらくらいの大きさのクモがいつの間にか天井にはりついていたり、ムカデが壁を這っていたりします。どこから入ったのか、畳の上をひょこひょことカニが歩いていたこともありました。つい先日は大量発生した羽アリが照明をびっしりと覆うようにたかっていました。

最初の年は特に、今までよりもかなりの頻度で出現する巨大な虫たちに怯えながら暮らしていました。彼らに遭遇しても怖すぎてその場で対処できず翌日ドラッグストアに殺虫剤を買いに走ったこともあります。

深夜に台所の扉を開けるときは、「何かがいる」と覚悟し、黒い線状の物体が落ちているとすべてムカデに見える…という日々が続きました。

2年目からは「啓蟄」(けいちつ:冬のあいだ隠れていた虫が出てくる時期)という言葉に敏感になりました。ほんとうに、啓蟄にあたる3月のはじめごろから虫がざわざわと目覚めて出てくる感じがするので、据え置き型の虫除けアイテムを家の中にも外にもたくさん仕込み、彼らの侵入に備えることにしました。

これがなかなか効果抜群で、深夜の遭遇や直接対決する場面はかなり減りました。

虫は今でも苦手ですが、事前の対策と見慣れたことでだんだん気持ちのおりあいがついてきました。

特に大きなクモは他の虫を食べてくれると知り、最初はおびえていた子どもたちも「くもさんいつもありがとう~おしごとおねがいしまーす」と声をかけて放っておけるようになりました。

 

家の中でも寒い冬

香川県の冬の平均気温は1月で5度ほど。やっぱり真冬は寒いです。いくら暖房で空間を暖めても、家中の無数の隙間から暖気は外へすーっと流れだしていきます。

冬場の暖房にかかる出費はかなりのもので、家のなかでも一日中ダウンベストが欠かせません。

家の中にいても外にいるように感じます。真冬はほんとうに、気密性の高い家が心から羨ましくなります。

やっと冬の厳しい寒さが薄れてくると、ほっとするとともに、今年も虫とともに過ごす夏がくる…と覚悟を決めなければいけません。

一年中、自然の影響をダイレクトに受ける暮らしとも言えますが、

色んなことに耐性がついて少しだけたくましくなった気がします。

 

虫と寒さの2大デメリットはかなり大きなものですが、

広々した畳の空間で過ごすことには変えられないな、というのが今の暮らしの実感です。