こんにちは。

私は2019年4月から瀬戸内海の離島、小豆島で暮らしています。夫と子ども2人と横浜から移住してきました。ここでは島暮らしの日々をお届けします。

今回のテーマは、お正月の定番料理、お雑煮についてのお話です。

 

小豆島のお雑煮とは?

 

小豆島にきて最初の1年は介護施設に勤めており、午後の集団リハビリのあいまのレクリエーションの時間に、島のお年寄りのみなさんとお雑煮について話をしたことがありました。

お雑煮はそれぞれの郷土の特産品やおもちをひとつの鍋で煮たものなので、具材、だし、餅にさまざまな個性があり、地域の特性が出ます。

 

こんなふうに聞いてみたところ、「小豆島のお雑煮はこれ!!」という定番は決まっていないようで、いろいろな意見が出ました。

 

だしはいりこだったり、かつおと昆布だったり。味付けに味噌をいれたり、醤油をいれたり。家庭によってさまざまでした。

醤油は小豆島の特産品なので、場所によっては「自分とこで作った醤油を使う」という風習があるのかもしれません。

 

 

具材について聞いてみたところ、関東出身の私にとっても定番である「大根人参こまつな」のほか、「焼き豆腐」「おあげさん」「ちくわ」「かまぼこ」「さといもは、かならずいれるな!」という声が聞こえてきました。

 

香川県全域でよく見られる、「白味噌+あんもち」の甘いお雑煮についてもこのときに教えてもらいました。お雑煮が甘いなんて!おもちからあんこが出てくるなんて!と思いましたが、こんなにバリエーションがあるのは面白いですね。

小豆島で白味噌仕立てで甘いお雑煮を食べているという方は今のところ聞きませんが、一部あるのかもしれません。

「近所同士でも、お嫁に行ったら全然違うお雑煮だった」という話はよく聞かれました。

 

変化するお雑煮

私の実家は父が東京、母は愛知の出身です。

お雑煮は父の好みに合わせて「かつおだしに醤油、具はこまつな人参大根鶏肉、餅は角餅で、軽く焼いて焦げ目をつけてから最後におつゆにいれる。三つ葉やゆずの皮のせんぎりをのせて完成」というスタイルでした。

夫の実家は父が東京、母が徳島の出身で、お雑煮は徳島・鳴門流の味噌ベースでおもちは焼かずにそのまま入れるスタイルだったそうです。

関東・関西という大きな文化の違いのある出身地の夫婦が一緒になったときに「お雑煮が違う!」というのはわかりますが、小豆島というひとつの島のなかでのご近所どうしでも、お嫁にいったさきで「お雑煮が全然ちがう!」というカルチャーショックが起こっていたというのは興味深い話でした。

小豆島は昔から海運が発達していたので、地続きで近所かどうかよりも、海づたいに交流のある地域どうしのほうが似た文化を持っていたのかもしれません。

あるいは、小豆島は遥か昔から「移住の島」でもあるので、集落の人たちが昔むかしにどこから来たのか、によってもお雑煮のスタイルが違っていたのかもしれません。

 

 

だし×味付け×具材×もちの形状と焼き方で、日本全国、お雑煮の種類は無限のバリエーションがありそうです。出身地で主流の味、実家の味、結婚後の味、など、人生においても何度か変化がある(かもしれない)、面白い料理とも言えますね。

 

 

島のお年寄りのみなさんと話したときは「当然、もちは丸餅!!」とそこだけは全員が一致していましたが、介護現場を離れてしばらく経った今回の年末、お雑煮の材料をスーパーに買いにいったときはそんなことをすっかり忘れていました。

「おもち買わなきゃ」と思った私の頭のなかには当然のように四角い角餅のイメージが浮かんでおり、おもちコーナーに丸餅ばかりが並んでいるのを見て「あれっ丸いのしかない!」とついつい角餅が片隅にでもないかどうか探してしまいました。(なかったです)

餅が丸くても四角くても味は同じなんですけどね。あんもちもけっこう目立つところに沢山売っていました。

 

おもちは本来ついたあとに丸めるもので、「家庭円満」「丸くおさまる」といった意味もあるそうです。

なんでも、江戸時代に人口の多い地域では、丸めるよりも「のして切る」ほうがスピードが早いため、大量生産できる、運ぶのに便利という理由で角餅が好まれるになったとか。

ざっくり日本の東側では角餅、西側では丸餅が一般的で、そのさかいめは岐阜県の関ヶ原あたりだそうです。天下分け目の関ヶ原で、おもちの形も分けられていたとは…!

 

 

 

今年のお正月、我が家のお雑煮はこんなかんじで、基本的には私の実家の味つけと具材で作りました。

角餅ではなく丸餅であることと、ご近所さんからたくさん頂いた、畑の大根をすりおろしてトッピングにして、「ゆきみ雑煮」になったことが移住前のお雑煮との違いです。

白味噌+あんもちの変わったお雑煮は高松の甘味どころで食べられるそうで、今度高松に行ったら探してみようと思っています。

 

今回このイラストを描いていたら、娘が「しかくいおもちもあるの?それは焼いたらどう膨らむの?」と聞いてきました。

おもちといえば丸いもの、というなかで育っている娘は、これから人生のなかでどんなお雑煮に出会うのでしょうか。

お雑煮談義は楽しいですね。

それでは、また次回。お読みいただきありがとうございました。

 

参考サイト

地域で違う餅の形:農林水産省

お雑煮研究所

 

 

書き手・イラスト :

喰代彩 (ほおじろあや)

横浜市出身、善了寺のデイサービス「還る家ともに」で介護士として働いていました。現在は小豆島にIターン移住して三年目、二児を育てながら島の暮らしと、善了寺デイサービスの思い出について書いています。(「瀬戸内 島暮らし」、「ばあちゃんたちのいるところ」として連載中)