ばあちゃんたちのいるところ・その5 蕗(ふき)の魔法 の巻。
善了寺のデイサービスにいたころ、春の始まりは、いつもふきのとうが教えてくれました。
そして、畑でとれる野菜以外にも、自然のめぐみを皆でわいわいと楽しみながら調理していただくことがたくさんありました。
春先のふきにはじまり、たけのこを掘って煮たり、うめ仕事をしたり、夏みかんをとったり、ぎんなんを拾ったり。
ひとが集まる場所にはいざこざも起こるけれど、そこに季節の恵みが登場すると、
ああだこうだ言いながらそれぞれに手を動かし、あっという間に美味しいおやつのできあがり。
さっきまでワルいことばっかり言ってたばあちゃんも、
帰りたくて仕方なかったばあちゃんも、
職員に「してもらう」ことばかりで恐縮していたばあちゃんも、
居眠りざんまいのじいちゃんも、みんないきいきとしていました。
ある日になにかをばあちゃんと収穫したら、次の日に違うじいちゃんが仕込みをして、
その次の日にまた違うばあちゃんが味付けをして、さらに次の日にみんなでいただく、
というリレー方式で楽しむこともありました。
(私が次に来る日に絶対食べさせてよね!としっかり釘をさすばあちゃんもいました)
個性的な面々が集う毎日のなかで、
一筋縄ではいかないことも日々たくさん起こっていましたが、
こうした自然のめぐみがもたらす、魔法のような効果にたくさん助けられていました。
それでは、また次回。お読みいただきありがとうございました。
この漫画の書き手:
喰代彩 (ほおじろあや)
横浜市出身、善了寺のデイサービス「還る家ともに」で介護士として働いていました。
現在は香川県・小豆島にIターン移住して三年目、二児を育てながら島の暮らしと
善了寺デイサービスの思い出について書いています。