昔、楚の国のある男が、舟に乗って川を渡っているときに、うっかり持っていた剣を水のなかに落としてしまった。あわてて彼は小刀を取り出し、大急ぎで舟バタにシルシを刻みつけた。

「舟バタにシルシを刻みつけて、一体どうするんだい?」

一緒にその舟に乗っていた仲間が思わずそう訊ねると、男は、

「オレの剣は、ここから落ちたのだから、こうしておけば剣のありかがわかるだろう?舟が止まってから、あとでゆっくりこの下を探せばいいのさ」

と得意顔で行ったという。

そのあいだにも舟はどんどん川下に流されて行った。

(後藤基巳『中国古代』をもとに編者にて構成)

(『ビジネス寓話50選』66頁      博報堂ブランドデザイン編 アスキー新書 刊)

「笑えない!これ私の事だ!」

日々、日常の中で失敗の連続の私。そして一応、その時反省はするのだけれども、時代は刻々と流れているのに、そのことにもとても鈍感で、また明日も同じような日常がやってくると思っているのです。例えば、スーパーの特売日になると、車で行って、歩いて持ちきれないほどの野菜やお肉やお魚を、ついつい多めに買ってしまいます。そして、なんだか得したようないい気分になって、冷蔵庫に収納するのですが、そんなに多めに買っても賞味期限は待ってくれないわけで、気が付くと、キュウリ2本は使ったけど1本が・・・。白菜2分の1すぐ使った後、その半分は使ったのに、結局あとの半分が・・・。あれあれシイタケが、ネギが・・・。主婦になって25年間、腐らせた食材を処分するたび、舟バタにシルシを付けたけど、舟は、今もどんどん流されています。そろそろ落とした剣を探しに行かなきゃ???

来週の、特売日は歩いていこう。

善了寺 坊守