善了寺が運営する少人数制のデイサービス「還る家ともに」所長のミネです。

記事のアップが滞ってしまっていますが「還る家ともに」では日々皆さんとともににぎやかにワイワイと過ごしております(^^)

さて、話は変わりますが神奈川県では福祉の未来を拓くことを目的として、毎年かながわ福祉サービス大賞を開催しています。 あるセミナーで第一回神奈川福祉サービス大賞を受賞された藤沢の小規模多機能事業所「いどばた」代表加藤さんのお話に感銘を受け、還る家ともに所長のミネもエントリーしたのでありました。

そして、その結果は……「次点」でした(>_<)

しかし折角なので抄録を、茶堂にて発表させていただきます。お粗末ではありますが(「還る家ともに」のこれまでの活動をまとめたものでもあるので)お付き合い頂ければ幸いです。


地域包括から地域包摂・共生社会へ

横浜市
宗教法人善了寺デイサービス還る家ともに
管理者 三根周
利用者 F(予定)

1.はじめに

運営法人である善了寺は、浄土真宗のお寺で、約400年前より現在所在の横浜市戸塚区矢部町にて地域の方々に支えられながら今に至っております。

「還る家ともに」は、平成17年4月にお寺の客間を改装するかたちで、定員10名のデイサービスとして開所し(現在は13名)、「関わりを粗末にしない事」「せめぎあって、おりあって、おたがいさま」をモットーにご利用の皆さまと一日一日を大切に過ごしています。

デイが開所してから約13年、直接の利用の有無にかかわらず(介護保険制度のカテゴリーの対象では無くても)、様々な方々がここを居場所とし、支援し・支援される事例がありました。制度やシステムの狭間で包括的ケアだけでなく、そこには当てはまらないような(制度からこぼれ落ちてしまうような)ケースの支援(包摂的ケア・ソーシャルインクルージョン)事例をあげていきたいと思います。

2.事例の紹介

①安否確認も兼ねたボランティア
ボランティアAさん(80代)は、遠方より地縁のない戸塚に引っ越して来られる。戸塚での関係づくりのきっかけにボランティア活動を希望し大規模デイに申し込むも、年齢制限で断られる。ボランティアセンターからの紹介で、当デイで6年前より活動される。単身独居にて、当デイでのボランティア活動はAさんの安否確認も兼ねており、連絡なしでデイのボランティアを休んだ時は家族に連絡することになっている。

また、ボランティア活動を通じてお仲間も増え、デイで毎年参加している商店会の日帰り旅行にも5年連続で参加されている。

②リタイアした盲導犬の居場所として
盲導犬を退職したBちゃん。リタイアすると、今まで活動していた交通機関や公共施設等への出入りも制約されるようになる。人が好きで、人が集う場所にいることを楽しみにしていたBちゃんの環境の変化によるリロケーションダメージを考慮した飼い主からの提案で、週1回デイに通う事になる。デイではセラピー犬として活躍していた。

③暴力から逃れ駆け込み寺・セーフティーネットとして
ボランティアセンターからの紹介で活動していたCさん。ご利用の皆さんとトランプなどのレクリエーションを楽しんだり、食器洗いなどの家事的な作業を買って出てくれていたが、やがて「お金を貸して欲しい」など、不穏な発言が目立ち始める。その為、話し合いの機会を持つと、実は共同住宅で暴力を振るわれていて、それから逃れるためのボランティア活動だった事がわかってくる。本人、ボランティアセンター及び社会福祉業議会の職員と話し合いの場を持ち、事態の改善に努める。

④ボランティアからスタッフへ 「生きづらさ」を抱いていたDさん
Dさんは1~2年ごとに職を転々としたのちブランクがあり、社会復帰のきっかけに当デイのボランティア活動を始める。純真無垢で裏表のないDさんは皆さまからも大人気。事業所で求人を出すことになり、声をかけ非常勤職員として勤務することになる。職員として勤務してみると、あいまいなコミュニケーションが苦手で、一つの言葉尻にとらわれてしまう事や、想像して働くことが苦手など、問題が顕在化してくるようになる。話し合いの場を持つ中で、お母さんはDさんに「ふつうだけど普通じゃない」という思いをもっておられ、受診を進められていた事や、本人も自分を理解してもらえない事への「生きづらさ」を感じている事などがわかってくる。話し合いの中で本人も前向きに受診する気持ちになり受診し、発達障害との診断がでる。その後、横浜市障害者就業・生活支援センターとも連携し、職場内環境を整える。

⑤グリーフケアの場として
お寺に集う方の多くは、ご家族を亡くされた方でありデイのボランティア活動を通じ利用者や他ボランティアと関わり、繋がっていくことで、グリーフケアの場となっている。

事例)Eさん(70代)は平成4年にご主人が往生され善了寺のお檀家となる。その後、平成17年にデイが立ち上がり、食事作りなどデイのボランティア活動を始めるもH22年娘さんが白血病を再発し往生される。ボランティア活動はお休みし、しばらく落ち込み家にこもる生活をしていたが、坊守(住職の妻)から食事作りだけでなく傾聴等も含めたボランティアの声をかけられ「落ち込んでいる自分でもお手伝いできることがあるなら」と、ボランティア活動を再開する。デイはお寺の中にあるので(お墓の近くにあるので)、気持ちの安らぎにもなり、お年寄りのご苦労された話を伺うなどしている中で「苦しかったり悲しかったりするのは、自分だけじゃない」と、前向きな気持ちになれたとの事。ご本人にとってボランティアとは何か問うと「生きがいになっているのよ」と笑顔で話されていた。

⑥40代からのデイサービス利用(当事者発表予定)
Fさんは、40代でくも膜下出血となり、右麻痺と失語症を患う。在宅復帰し、中途障がい者地域活動センターの利用を検討も自力での通所が困難なため断念。特定疾患ということで送迎のある高齢者デイの利用を検討も、デイの利用主体は80代。年齢的なギャップもあり迷いもあったが、見学に来た際にご利用のおばあちゃんが快く「私がみてやるから大丈夫だよ」と受け入れてくれ、利用開始となる。

デイではレスパイトを中心としながら、本人の主体性を発揮できるような「生活の場」での機能訓練を行い、趣味の釣りに行ったり、商店会の日帰り旅行にも参加される。

Fさんにとっての当デイの利用は、機能訓練以上に「社会への通過施設」としての意味合いがつよく、デイに通いながらスタッフだけでなく、多くのボランティアや見学者ともかかわり、社会参加する上での一つの重要なファクターとなっている。

3.考察

上記事例のように、社会の中での多くの方々が様々な場面で居場所を求めており、単に介護保険の事業所としてだけではなく、地域の方々の小さな声に耳を傾けることで介護に限らないところでも地域の資源として寄与でき、それが社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)へつながっていくのではないでしょうか。

4.おわりに

レスパイトが軽視される風潮があるが、(Fさんのように)レスパイトを通じて関わりを粗末にしない中で、人と人が紡がれ、豊かな社会の参加へと繋がっていけるならば、レスパイトはとても価値のあるものなのではないでしょうか。


以上になります。
お読みいただき、ありがとうございます。