善了寺の山門の坂を見上げると、そこには大きなサルスベリがあります。
7月中はしょぼしょぼとしか花がつかなかったので、今年はあまり咲かないのかと思っていたら、8月に入って急にやる気を出し、今、最盛期を迎えています。

以前ご住職に伺ったのですが、お寺にはサルスベリが植わっていることがよくあるそうです。お釈迦様が入滅する時、傍にあった木に似ているからだそうです。

 

サルスベリに似ている木

実際に見たことはなくても、耳にしたことはあるかもしれません。

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を表す」

そうです。その木は、平家物語の一節にある「沙羅」です。沙羅はインド中北部からヒマラヤにかけて自生するため、日本ではなかなか見られません。それで代わりに、樹皮の似ているサルスベリを植えているんですね。

 

サルスベリを漢字で書くと

さて、「サルスベリ」という名前は、樹皮がつるつるして猿でも滑ってしまう、という意味ですよね。ならば、漢字で書くときは「猿滑」じゃないのかしら。なぜ「百日紅」なんでしょうか。

広辞苑で調べてみると、「さるすべり」の漢字表記は「百日紅、猿滑、紫薇」の3種類があります。猿滑という表記もあるんですね。百日紅、紫薇は中国語の辞典にもありました。

この中で、最も使われている百日紅は漢名です。音読みでヒャクジツコウと読むこともあるようです。
漢名とは、中国を学問の参考にしていた時代の本草学(植物学)における正式名称です。昔は、漢名(昔の中国における名称)を見出しにして、その後に和名が書いてありました。つまり、「百日紅」が漢名で、「さるすべり」が和名ですね。

「約100日間、ピンク色の花を咲かせる」という意味が漢名の由来だそうです。
実際には、一度咲いた枝先から再度芽がでて新しい花を咲かせて、花が咲き続けているように見えるんだそうですよ。

 

漢名が一般化したもの

同じように、百という数字を名前にもつ百合。誰が植えた訳でもない野生の百合も境内で凛と咲いておりますよ。こちらも漢名ですね。葉や鱗茎(りんけい)が多数重なり合うことから「百合」との名だそうです。

漢字と読み方がかけ離れている植物名の書き方は、かつての漢名が一般の人々に定着して生まれたものだったんですね。

 

参考 季節の花300 https://www.hana300.com/sarusu.html