11/23(木)にチャリティコンサートを開催しました。4月に1回目を開催、今回が2回目の開催でした。前回に続き、今回もこまちパートナーさんやこまちぷらすスタッフ、普段はキッチンに立っていたりホールで接客をしているスタッフ、商店会や雑貨販売、事務局で事務をやっているメンバーや代表森など、普段は別々の部門にいるスタッフたちが集まって、合唱やウクレレ、ピアノの演奏会をしました。

こまちぷらすの活動は「困っている人を助ける」という活動ではないため、分かりづらいのですが、実際困っている状態になってしまうと、身動きが取れなくなったり助けを求められなくなったりしてしまうことを実感する日々です。

そうなる前に自分自身と出会い直したり、安心して他者と出会ったり、まちの人たちに出会っていく場や機会があると本当に豊かな生き方・街になると思っています。そんな願いを込めて開催したコンサート当日は、小さいお子様から大人の方まで多くの方が一緒に楽しんでくださいました。

◆チャリティコンサートを企画した石田の想いと朗読

5歳と2歳の子どもがいる石田はこまちぷらすのスタッフになって1年目。こまちぷらすに関わるようになってから人生が動き出したと感じたそうです。「こまちぷらすの面白さをもっと広めたい、皆さんにも知っていただきたい」という思いから、今回の企画を進めてくれました。

石田は得意な朗読劇を披露してくれました。こまちパートナーさんによるピアノと共に、実話を元にした朗読は、会場を号泣させるほどの内容で、自分の子どもが小さい頃に感じた気持ちが蘇ったという参加者も多数でした。子育てはこれからという若い方たちにも伝わり、直接感想を伝えに来てくれたというエピソードも。

石田が印象に残ったという感想をご紹介します。

「きっとこの物語には続きがある。この時はいいかもしれないけど、明日はどうなるかわからない。育児は毎日続いていくから。目には見えないだけでこんなお母さんがいっぱいいる。」

「この物語のお母さんは夕方4時ごろにケーキ屋に駆け込むんだけど、提供する側として、そんなお母さんを受け入れたいなって考えさせられた」(午後のカフェ勤務スタッフ)

◆チャリティコンサートを通して

石田の想いに共感し、演奏したいスタッフたちが勤務時間の合間を縫って少しずつ練習を重ねたり、陰から石田のサポートをしてくれたスタッフ。「ひとりでやらなくても、気張らなくてもいいんだ」と感じたこと、”チャリティコンサート”という目に見える形で演者が純粋に音楽を楽しく表現してくれたことが嬉しかったと石田が話してくれました。

そして、こまちパートナーさんも含めてみんなでそれぞれ得意な分野で1つのものを作り上げ、それぞれが輝いている姿を見れたことが良かったというコメントで締めくくってくれました。

最後に、『育児は過ぎたころに美談になるのかもしれないけど、私はとにかく「この子の今」を大切にしようと思った。』そんな想いが込められた石田の朗読はこちら。

「朝からお菓子は食べないよ?」
「テレビ近いよ、離れて」
「こら!道路に向かってボール投げないの」
「頂きますって言った?」
「もう一回滑るの?もうママ疲れたよ」
「まって!靴履いたまま入らないで!」
「そろそろお風呂だよ、いやじゃない!」
「寝る前は歯磨きするよ、おいで~」

毎日が、あわただしい。

一人の時間と言えば、お風呂とトイレのときぐらい。
かわいい色だと思って買ったマニキュア、右足だけ塗ったところで止まってる。
子どもが寝たら、今日こそは左もやろう。

今日は5時半起きの上に昼寝もしてないからな。ふぁ~ねむい。
今のうちに夜ご飯を作ってしまおう。
何にしようか。昨日はうどんだったから、今日はチャーハンでいいか。

あれ騒いでるな。どうした?
ああ、ブロックがはまらないのね。はい、どうぞ。
ママはいまご飯を作ってるから、パパと遊んでくれる?

ベーコンはあるよね。レタスは1週間前のだけどいける・・・
あー!それ触らないで。ママのマニキュア、そこに置いててね。
卵の殻を割って、混ぜ・・・
あ、うんうんわかったから向こうで遊んでて。
これから火使うから、危ないよ、来ないでね。

お米、こめこめ。冷凍のやつがあったかな。
あ、ストックも全然ないじゃん・・・

こういうとき、きっかけはささいなものでも良かったりする。
子どもがマニキュアのふたを開けて、自分の手の甲にべたべたと塗っていた。
容器が横倒しになって液が床にこぼれていた。

「ちょっと何やってるの!!!!!!」

自分でもびっくりするくらい大きな声がでた。
でも感情は抑えられない。

触らないでって言ったよね?
どうしてダメって言ったことするの?
手も床も汚れてるじゃん。
ねぇ聞いて!ママ怒ってるよ!!!

わたしがしゃがんだ瞬間、
こどもが私の頭をはたいた。
眼鏡が落ちて床を滑った。
反射的にわたしの右手が子どもを叩こうとした、それを理性が止めた。

涙がでてきた。

いや、いや、いや、いや、もういやだ!なんなの!
うるさい!うるさい!もういや!!!

私の体はケータイと財布を乱暴につかんで、玄関へ向かっていた。
夫がびっくりした様子で駆け寄ってきた。

「ちょっと出てくるから」

わたしは背を向けたまま、吐き捨てるように出て行った。

怒りに任せてとにかく歩く、歩く、歩く。
行きたいところも、やりたいこともないのに。

しばらくすると、さっきよりは気持ちが落ち着いてきた。
あれ?なんか体がスース―する。そっか、今日はリュックじゃないから。
ベビーカーもない。それに気づいた途端、歩き方がぎこちなくなる。
前かがみになってないかな?

いつも子どもと歩く道。ここで石拾う。人の家だからやめてほしいんだけどな。
いつも通行人を見てる犬。怖いのにいつも近づきたがる。
ぐるぐる回る郵便ポスト、手を突っ込む穴のあいたフェンス・・・
全部素通りした。駅に着いた。あれこんなに近かったっけ?

急に出てきちゃったからな、どうしよう
悪いことしたかな・・・
あんなに怒らなくてもよかったな・・・

ふとあまい香りがした。目線の先におしゃれなカフェ。
前から気になってたところだ。
本日のデザートの看板が目に入った。

「フレッシュ苺たっぷりショートケーキ」

わぁ!おいしそう。いまが一番旬だもんね。
5時までならドリンクもついてくるらしい。

そうだケーキを食べよう。でもこんな恰好でいいのかな?

窓に映った自分の姿を確認する。
3分で済ませた落ちかけの化粧、一つ結びの髪、適当に選んだトレーナーに、よれたGパン。かかとの擦れたスニーカー。かばんも持ってないし。

店員さんと目があった。ジェスチャーで「おひとりさまですか?」と聞かれる。
とっさに「はい」とうなずいてしまった後に、わたしのことじゃないかも?
と、後ろを振り返りかえる。

店員さんがこちらに来て、「こちらへどうぞ」と言った。
あ、そうか、わたしっていま一人なんだ。

窓際のボックス席に案内された。
さすがに夕方4時半のカフェはお客さんもまばら。
ここは、いつもきらきらした女性客でにぎわっている。
とてもじゃないけどベビーカーの子連れが来れる場所じゃない。
看板にあったケーキとアイスティーを注文する。
お店でケーキを食べるなんて妊婦の時以来だっけ・・・。

ケーキが来た。背筋が伸びる。
ぴかぴかのフォークで小さく切り崩して一口ほおばる。
おいしい。噛みしめながら食べる。もったいないな。

あ、もう家を出てから1時間たってる。
どうしてるかな?泣いてないかな?
そろそろお腹すいたって騒ぐ時間だな。

スマホをみる。夫から連絡は特にない。
大丈夫、まだ、大丈夫。

そうだ。せっかくだし服屋さんに寄って行こう。
あ、このズボンかわいい。デザインが好きな感じ。値段は?うん、悪くない。
しかも20%オフ。でもこれしゃがみにくいかも。汚れもついたら落ちにくそう。
あれ?こども服も置いてある。このトップスかわいい!似合いそうだな。
しかも親子でお揃いにできるんだ。
80センチはある?あれ、100からじゃないとないのか。
三年くらい経ったらペアルックできるかな?
その後も買いたいものを探すために駅前をうろついた。
だけど結局何も買えなかった。

空気が冷たくなってきた。そろそろ帰らなきゃ。
そういえばお昼からオムツ変えてないし、お風呂の支度もまだだし、漬け置きしてた子どものスニーカーも洗ってない。夜ご飯もほっぽり出してきちゃったな。お腹すいたって騒いでるよきっと。

子育てしていると、よく「いまが一番いい頃ね」って言われる。
だけど正直ピンとこない。
もちろんわが子は大切だけど「いい頃」ってどういう意味なんだろう?
本当は笑顔で穏やかに接したいのに、いつもイライラ、怒ってばっかり。
それって「いい頃」っていうのかな?
みんなそう思ってるのかな?

そう思えない私って
お母さん向いてないのかな

町内のスピーカーから6時の音楽が流れ始めた。
この坂の先が、わが家。
手を振って前に進もうとするけれど、足は思ったように動かない。

ママ!!!

坂の途中でその声は、霧をはらすようにまっすぐにわたしに届いた。
あれ、どうして?また涙がでてきた。

「ただいま」
こどもを抱きしめる。ああ、この香り。

ギュッと抱き返してくれたあと、
どうして泣いているの?と不思議そうに小さな手が私の頬を包み込む。
うっすらとマニキュアの色跡が残っている小さくてかわいい手。

ケーキ買ってきたよ。ママはこれがすきって、苺のケーキ、この子が選んだんだよ。
夫が言った。
お米も炊いたよ、ごはん食べたらみんなで一緒に食べよう

「今が一番いい頃」なんてことは後から思うことなのかもしれない。

いつも笑顔でいなくたって、いいのかもしれない。
お母さん向いてないなんて、どうでもいいのかもしれない。

とにかくこの子と過ごすいまを大切にしようと思った。

わぁ!うれしい。苺のケーキ食べたかったんだ!

さっきがっつり苺のケーキを食べたことは
私だけの秘密。

 

△代表森と石田