先日、辻信一先生とブータンの山奥にあるチモン村へ行って、感じたことを少しずつ書いていこうと思います。他のブータンの写真や記事は「住職のつぶやき」から、ご覧いただけます。

環境団体「サムドルップ・ジョンカー イニシアティブ(SJI)」の運動の中で大切にされているのが、たねの保存事業「シードバンク」です。シードバンクは、経済性を優先させることによって均質化させられる植物の多様性を護ることによって、暮らしの多様性をまもっていく運動です。その現場に連れていってもらいました。シードバンクがある場所は、なんとお寺だったのです。

そのお寺は、ゾンサル・ケンツェ・リンポチェが建てられたお寺でした。そこでは、SJIと共に、様々な活動が展開されていました。SJIの運動は、リンポチェのお導きのもとで、僧侶と市民とわけへだけなく共に活動しているところに大きな特色が感じられました。

仏教の理想を掲げて共に、人々の平和を願いながら修業に励まれていた僧侶の皆さんが、人々と共に巨大な経済優先のグローバリゼーションの波に飲み込まれていく中で、理想と現実に大きな隔たりができてしまった。
これは、横浜の私も同じです。この隔たりを超えていくために、SJIのみなさんは、ロモン教育という教育を一般市民とともに僧院の中で、お坊さんに対して実施されていきます。お坊さんに現実を学んでいただくという運動です。
お話を伺った時に、自分自身が問われました。SJIのみなさんが、ブータンの仏教を暮らしの中で受け止め、共々に危機感を抱きながら活動されているのだと思いました。僧侶もそれに応えていく。素晴らしい活動が展開されていると思います。その実践として、シードバンクが境内地の中に建てられているのです。実は、この種は、いつもお経をいただいているありがたい種なのだと、SJIの方が誇らしげに語られていました。

経済優先の社会のあり方に共に苦悩を抱えながら、学びほどき、学びなおし、知恵を出しあいながら暮らしをつくっていく。お寺の実践を改めて考えさせられるひと時でした。