デイサービス『還る家ともに』には『縁側』があります。

縁側…。そのヒントをくれたのは、以前デイサービスをご利用していたおばあちゃんでした。

農家へ嫁入りし、『一番鳥が鳴いたら起きて働くんだ!』と姑から小言を言われながらも、横浜までリヤカーを引いて収穫した野菜を運んだおばあちゃん。しっかりと農家の暮らしを体で学びとり、姑を看とりました。今ではありえないことですが、当時の女性はしたたかです。

そんなおばあちゃんの老後の楽しみは、近所のお友達がフラりと家に遊びに来て、縁側でお茶を飲みながら、おしゃべりを楽しみ、自分で漬けた季節の野菜の漬け物をお茶うけに振る舞うことでした。

私たちデイサービスの職員はこのおばあちゃんから、畑の耕し方から梅干しや味噌の仕込み、収穫した野菜の調理法などを沢山教えてもらいました。私は会社員の子供として育ちましたから、畑も漬け物もはじめての体験でした。季節の恵みを昔から伝わる日本人の知恵で加工して美味しい食材を完成させることに感動しました。

デイサービス建て替えの際、建築士さんに希望を聞かれ、思い付いたのがこのおばあちゃんの『縁側』でした。憩いの場、お話を楽しむ場、外の景色や庭の花を楽しむ場、梅干しや切り干し大根、干し柿を乾燥させる作業の場…沢山の要素がふんだんに盛り込まれたこの縁側。これからも、この縁側を通して沢山の思い出を、ご利用の皆さんと作っていきたいと思っています。

さしあたっての私の希望は、将棋好きのおじいちゃんと縁側で将棋をさすことです。いつもグウの音も出ないくらいコテンパンにやっつけられていますけど…。