新しい本堂をお迎えして、ご案内をしていると、「今まで、どうやってお参りしていいのか分かりませんでした。ご案内して頂いてよかった」という言葉を頂きました。

住職として、いたらない自分に気づかせていただいたと同時に、新しい本堂だからこそ、みんな初めてお参りするという立場になれるチャンスだと思いました。

※画像は、聞思堂から新しい本堂にお還りになる直前の善了寺御本尊 阿弥陀如来様です。

そこで、まず、私たちがどこに向かって手を合わせているのか考えてみたいと思います。

善了寺の御本尊様は、阿弥陀如来です。阿弥陀如来は、大いなる光(無量光)大いなるいのち(無量寿)をそなえた仏さまです。「大」という言葉は、「はかり知れない」「無量である」という意味と共に、「世間の価値観を超えている」という意味があります。

世間では、お墓は、私が先祖のお世話をするところ、本堂は、私が願い事をするところと捉えている人もいるようですね。善了寺のお参りはちがいます。「私が何かをする」ということは、どうしても私を中心に物事を考えてしまいがちになります。特に、自己責任論がおおはやりの世間では、そう考えがちになりますよね。何事も努力が足りない・・・。

努力することは大切なことです。でも、自己責任ばかりでは、受け止めきれないこともたくさんあります。世間では努力しても報われないことがたくさんあります。そんな、切なさや寂しさを抱えたとき、どうか、お寺に参ってください。

ここで、阿弥陀如来を、願いごとをなんでもかなえてくれるスーパーマンのように考えたら、自己責任論の呪縛から解放されることはありません。何故なら、自己が問われないからです。私に力がないからもっと強い力を身につけようとなったら、努力しても報われない現実を繰り返すのと同じ構造です。

まだ足りないまだ足りないと私の願い事をかなえてくださいと請求することになります。私の価値観が変わっていないのです。自分の思い通りにしようとする願いに、大きい小さいはありません。

大いなる光、大いなるいのちの阿弥陀如来にお参りする意味とは何でしょうか。それは、世間の価値観を超えた願いそのものに遇うことです。

阿弥陀如来は、まだ、修行者法蔵菩薩であったとき「必ず一切のいのちをすくう。そうでなければ仏にはならない。」と願われ、その願いを成就して阿弥陀如来と成られました。

願いが起きるのは、そこに、願わずにはおれない現実があるからです。その現実こそ、自己中心の価値観から抜け出ることのできない私たちの苦悩でした。

私たちもすべてのいのちの平和を願います。しかし、現実は、暴力に満ち溢れています・・・。そんなとき、私たちは、自分の殻を固くしてしまいます。平和の願いもそのかたい殻に閉じ込めてしまいます。どうせ、現実はそんなものだと・・・。切ないですよね。誰だって、戦争しようとこの世に生まれてくる人はいません。誰だって、他人を不幸にしてやろうと思って生まれてきません。

だからこそ、変わることのない「必ず一切のいのちを救う。」阿弥陀如来の願いとの出遇いが必要なのです。阿弥陀如来の願いは絵空事ではありません。願いを実現するために排除しない、誰かが犠牲にならない、加害も被害も超えた非戦の願いこそ、私たちの人生の要なのです。

ゆるぎない要を頂く時、扇は鮮やかに開いていきます。要は二つではなく一つです。暴力ではなく、非暴力の願いです。あざやかに開く扇は、時には風を起こすでしょう。世間の風を読むのではなく、風を起こしていくのです。時には、柔らかくひらくその美しい姿に人々をひきつけるでしょう。そして、時には、ものを運び、時には支え、時々に柔らかな風を起こしていくことでしょう。

ゆるぎない要こそ、世間の価値観を超えた阿弥陀如来の願いなのです。お参りは願い事をかなえるのではなく、願がわれていることに気づかせて頂く大切なご縁です。お墓まいりもご先祖のお世話ではなく、阿弥陀如来のはたらきによって、救われたご先祖の願いを聴く場所なのです。

どこに向かって手をあわせているのかと、自分自身に問いかけてみましょう。

方向は私が決めていたのではなく、導かれていました。合わす手は、すでに非戦の願いをあらわす姿でした。暮らしの中に生きる願いだからこそ暮らしの中に生きるお寺を伝えてくれたのです。

是非、善了寺の本堂にお参りください。待ちしております。

お参りの仕方

  1. 本堂正面の扉は、朝6時30分には開けます。朝の7時から朝のおつとめが毎日あります。夕方は原則4時に夕方のおつとめをしてから扉を閉めます。その間、いつでもご自由に御本堂にお参りください。
  2. 入られましたら土間からお焼香することができます。一回焼香です。お焼香の際は、お念仏を申しましょう。
  3. お念珠を忘れた方は、貸出用のお念珠を置いておきます。お使いください。
  4. 本堂でゆっくりしたいときは、本堂横の事務所に一声おかけください。