2013年12月に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産へ登録されたことから、ヘルシーフードとしていま世界中から注目されている日本食。この日本食の基礎になっているのは、江戸時代の「江戸料理」と言われています。今回は、私たち日本人の食生活の原点とも言える「江戸料理」についてご紹介します。

料理の文化が発展した江戸時代

長らく続いた戦乱の世が終わった江戸時代。庶民が食事を楽しめるようになり、料理の文化が発展しました。また、照明用の油が一般家庭にも普及したことから就寝時間が遅くなり、それまでは朝と夕の2回だった食事に昼が加わり、屋台や料理店などの外食産業も栄えはじめました。
そして、江戸料理というジャンルを飛躍的に発展させたのが江戸時代中期に関東で発展した濃口醤油(しょうゆ)。徐々に市場に流通していき、寿司やてんぷら、すき焼き、しゃぶしゃぶ、鰻、蕎麦といった日本を代表する江戸料理のレシピがたくさん生まれました。

「江戸料理」は究極のスローフード!?

冷蔵庫がなかった時代なので、人々は旬の食材を大いに活用しました。さらに、砂糖と油はたいへん高価なものだったので調味料の使用は最小限に。そして、原則的に肉食が禁じられていたため、野菜と魚介類を中心としたメニューでした。栄養価の高い旬の食材にあまり手を加えずにシンプルにいただく——これが江戸料理の醍醐味。江戸料理は、健康長寿につながる「究極のスローフード」の原点とも言えそうです。

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身近な健康食材を活用!

身近な食材を上手に活用した、体にやさしい江戸料理。当時の人々が愛用した健康食材のなかから、一部をご紹介します。

千利休にちなむ料理も残る「胡麻」

縄文時代、アフリカからインド、中国大陸を経て、日本に伝わった胡麻。高価だったため、貴族やお坊さん以外はなかなか口にできないものでした。ところが、江戸時代になって胡麻の栽培がさかんになり、胡麻和えや白和え、胡麻豆腐、菓子など、胡麻を使った料理法が、江戸時代の庶民の料理書に多数掲載されています。
江戸時代より少し前となりますが、茶人・千利休も茶菓子として胡麻を愛したひとり。大根に練り胡麻や味噌を和えた「利休あへ大根」や、卵と胡麻に調味料を混ぜて蒸した「利休卵」など、「利休」の名がついた料理も残っています。
胡麻にはタンパク質、ビタミン類・ミネラル・食物繊維など、豊富な栄養が含まれることで注目されます。胡麻に含まれるゴマリグナンという抗酸化物質がエイジング予防に効果的で、現代では美肌やダイエットとしても注目されています。

庶民のお腹を満足させた「おから」

おから料理と言えば「卯の花和え」や「おからの炒り煮」が一般的ですが、江戸時代の料理本を見てみると、汁物、煮物、ふりかけからスイーツまで幅広いおから料理が記載されています。安くて腹持ちがよく、体を温めてくれる必需品の食材で、とても重宝されていたようです。
米がぜい沢品だったため、炊き上がった白飯におからを混ぜて、かさを増して「かて飯」にしたり、おからに焼いた鯛、キクラゲや焼き栗などの材料を混ぜ、海苔で包んで巻き寿司のようにあつらえた「ノリマキラズシ」にしたりしてアレンジしていました。
食物繊維やカルシウムをたっぷりと含み、たんぱく質や炭水化物、カリウムにも富んだ健康食材のおから。低カロリーなので、江戸時代の知恵を生かしてひと手間かければ、ダイエットにも効きそうです。

薬としても重用されたフルーツ「いちじく」

いちじくが、中国から日本に伝来したのは江戸時代。当時から「不老長寿の秘薬」として知られており、江戸時代の書物には胃腸の働きを促し、お腹や痔、喉の痛みを治すと記されています。焼いたり、砂糖に漬けたりして兵糧や参勤交代の際に持参したのだとか。
抗酸化物質のアントシアニンが豊富に含まれており、女性に不足しがちな鉄分やカルシウムなどのミネラルも補えます。また、女性ホルモンのエストロゲンに似た成分を含んでいるので、更年期障害の予防効果も期待できるといわれています。

「江戸料理」を食べて毎日イキイキ!

栄養価の高い旬の食材をシンプルに調理する江戸料理。スローフードのヒントになるばかりでなく、アンチエイジングや健康維持にも効果的です。みなさんも普段の食事に体が喜ぶ「江戸料理」を上手にとりこんで、健康的な美しさを手に入れてはいかがでしょうか。

参考: